□心境の変化
1ページ/1ページ

最近、夢の中で凛人に会う。
凛人はいつも寂しそうな顔で俺を見つめる。

「まだ、会えない。」

そう言って背中を向けて立ち去ってしまう。

全力で走ってその背中を追うが、絶対に追いつくことはないし、
手を伸ばしても、絶対に届くこともない。
どんなに叫んでも、一度背中を向けたら振り返ってはくれない。

何故俺の前から姿を消そうとする。
俺には凛人が必要なのに。
俺が未熟だから、弱いから、だから俺を突き放すのか。

もう誰にも、凛人を奪われたくない。
頼む、もう一度俺の傍に戻ってきて欲しい。



夢から覚めた時、決まって全身冷や汗をかいている。
最近よく見る悪夢に、義勇は悩まされていた。
何度俺は、凛人を失えばいいんだろう。

思い出すと心が辛くなるから、心の奥底に記憶を閉じ込めていたはずなのに、最近凛人の夢を見ることが増えた。
その原因は分かっていた。
二年間音沙汰もなかったのに、最近また、凛人と名乗る狐面の鬼が出没すると言う噂を聞くからだ。
煉獄も、炭治郎ですら凛人の姿を見たと言う。
だが、自分の前には一度として現れたことがない。
まるで避けられているかのように、凛人を守れなかった自分の弱さを、信じきれなかった自分自身を責められているように義勇は感じていた。

鬼と化した凛人と相見えた時、その首は自分が斬ろう。
それが凛人の望みだろう。

そう常に思っていた義勇は、炭治郎と禰豆子に出会った。

鬼は絶対悪。
飢餓状態になった鬼は親でも兄弟でも殺して食べる。

今までそういった場面を、義勇は山ほど見てきた。

人を食い殺す化け物。
殺された人は戻らない。
自身の姉も、錆兎も、永遠に自分の傍に戻ることはない。
悲しみの連鎖を断ち切るためにも、鬼は抹殺されなければならない。

そう信じて戦い抜いてきた。

だが、
身を呈して兄を守る禰豆子の姿をみて、

人を喰らわない鬼が、本当にいるかもしれない。

そう、初めて思えた。

凛人の存在が噂された二年前も、人を守り鬼を斬っていたと聞いた。
目撃した煉獄からも直接話を聞いた。

だが、どうしても信じられなかった。
大切な者を残酷に殺してきた鬼という存在を、どうしても信じたくなかった。

それが、今まで自分が大切に思っていた凛人だったとしても。

禰豆子の存在を知って、人知れず涙を流した。
鬼と化した凛人の首を斬らねばならないのは自分だと思っていた。
自分の手でまた、凛人を失うことになってしまう。
だけど、もしかしたら、また共に生きることができるかもしれない。


冨岡は、今日も鎹鴉の指示の元、任務に繰り出す。
凛人の姿はないかと探しながら。
次の章へ
前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ