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□猗窩座
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「凛人。」
立ち尽くす凛人に、煉獄が声をかける。
凛人はそれに気づき、煉獄の方へゆっくりと歩み寄る。そしてしゃがみこみ、煉獄を見つめる。
「杏寿郎、死なないで。」
凛人は、ぽろぽろと涙を流し始めた。その瞳は、先ほどまで真っ赤であったが、涙を流し目を瞬かせていく度に、色が変わり、段々と元の漆黒に変わっていった。
「凛人がいなれば、俺は殺されていただろう。凛人のおかげで助かった。ありがとう。」
そう言うと、凛人はきょとんとした顔をして、そして、泣きながらも、朗らかに笑った。
その背後からは、太陽が昇り始めていた。
「凛人、どこかに隠れろ。じゃないと、」
体が消滅してしまう。
煉獄も、そして炭治郎もそのことに焦っていた。
自身の妹である禰豆子は善逸が箱に入れているのを見たから大丈夫なこともわかっていた。
問題は凛人だ。どこか物陰に隠れられそうなところが傍にはどこにもない。
凛人が、死んでしまう。
そう皆が思っていた時、陽光が凛人の体に降り注ぐ。
凛人の体は消滅せず、陽光に照らされきらきらと輝いていた。
その姿は、誰よりも美しかった。
釘付けになって見つめていると、凛人の体が、ふらりとよろめいて、そのまま倒れてしまった。