□猗窩座
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蜘蛛山にて鬼と対峙し負傷した炭治郎、善逸、伊之助の三人は蝶屋敷にて療養し、胡蝶しのぶの診察の結果、前線復帰可能の診断を受けた。
指令が来た時に動きやすいようにと蝶屋敷を出発した炭治郎に、善逸が猛反発をした。

「まだ指令来てなかったのかよ!!居て良かったじゃんしのぶさんちに!!」

わーんっと泣きながらボカボカ殴りつけてくる善逸に、炭治郎もたじたじになっていた。

そんな時、伊之助が汽車に反応して「猪突猛進!!」と叫びながら汽車に体当たりしたり、帯刀していることを車掌にばれ警官を呼ばれそうになったりと、騒がしくもなんとか無限列車に乗り込んだ。

それは、
炎柱、煉獄 杏寿郎に会うために。

探していたその者は汽車の中にいた。大量の弁当を「うまい!うまい!」と連呼しながら食していた。
そんな様に炭治郎達は少し気圧されながら、なんとかお互いに自己紹介をし合った。

炭治郎は自身の父が舞っていた、ヒノカミ神楽について、火の呼吸はあるのかを知りたくて煉獄の元へ訪れたのだが、「知らん!」と一蹴されてしまい落ち込んだ。
そんなこんなと話をしていると、車内に鬼が出現した。
短期間のうちに車内で40人以上もの人を喰ったかもしれない鬼の出現。

炎柱、煉獄 杏寿郎は勇ましく刀を抜き、鬼を斬り伏せた、かに思えた。

だが、これは全て夢の中の話。
眠り鬼 魘夢の血鬼術が作り出した者。

煉獄も、炭治郎、善逸、伊之助も、みんな、夢の中に誘われた。
巧みに思えた鬼の作戦であったが、四人力を合わせて好戦し、二百人以上の乗客を一人として死なせず、下弦の鬼を滅殺することができた。
これにて一件落着と、皆疲弊し負傷ながらもこの戦いは決着したかに思えた。

上弦の参 猗窩座が出現するまでは。

「鬼にならないなら殺す。」

般若のような恐ろしい顔つきで、猗窩座は煉獄へ攻撃を繰り出す。
煉獄も隙のない、洗練された攻撃でそれに対抗する。
その戦いの凄まじさに、炭治郎も、伊之助も、自分たちの弱さを痛感し、足手まといになることが手に取るようにわかり、助太刀にも入れずただただ見守ることしか出来なかった。

だが、鬼対人間の戦い。
鬼は傷をすぐに修復し、
煉獄の体は段々と傷つき、ぼろぼろになっていった。
左目は潰れ、肋は折れ、内臓も傷つき口からは血が溢れてくる。
実を言うと立っているのもやっとの状態であるが、煉獄の強靭な精神力で維持していた。

まだ俺は戦える。
ここで自分が倒れてしまっては、ここにいる皆んな殺されてしまうだろう。
若い芽を摘ませるわけにはいかない。

全力で応戦するしかない。

「俺は俺の責務を全うする!!ここにいる者は誰も死なせない!!」

全身に力をいれ、技を繰り出す。

玖の型 煉獄

鬼も技を繰り出す。

破壊殺 滅式

技と技がぶつかり合う。
土煙が舞う。

炭治郎と伊之助が見守り、心の中で叫ぶ。

煉獄さん、煉獄さん!!
倒してほしい、上弦の鬼を!!

土煙が晴れていく。
二人の姿が見え始めた。

そこに見えたのは、
煉獄は倒れ、それを見下ろす猗窩座の姿だった。

技の衝撃と攻撃で、煉獄の両腕は粉砕され、骨盤や足の骨も折れ、立つことも、剣を握ることも出来なくなっていた。
煉獄は、戦闘不能となってしまった。

「煉獄、このままでは俺に殺されて死ぬ。そのままでも死ぬ。鬼になると言え。」

見下ろし、猗窩座は言う。
だが、煉獄は、傍に落ちていた刀をなんとか握り、猗窩座の方へ向ける。

「絶対に、ならない。」
「…なら、殺す。」

冷たく言い放ち、猗窩座が腕を振り上げた。

「伊之助!煉獄さんのために動け!!」

炭治郎が叫び、伊之助が動く。
だが、反応が遅れた。間に合わない。
絶体絶命の状況。
もう駄目かと思われたその時、


猗窩座の腕が、斬れた。
そして、猗窩座が受け身を取るも遅く斬り付けられ、衝撃で猗窩座の体が吹き飛ぶ。

何事かと目を凝らし見つめると、そこには一人の隊士が立っていた。
その顔には、狐面がつけられ、煉獄や炭治郎も見知った姿であった。

「…凛人。」

煉獄が呟く。
すると、凛人は振り返り、狐面を外し、煉獄を見る。
傷ついたその体に、凛人は顔を顰め、そして涙を流した。

「遅れてごめん、杏寿郎。」

近づき、潰れた目を撫でる。
そしてその体をふわりと抱きしめた。

「後は任せて。」

そう耳元で呟くと、凛人は煉獄へ背を向けて、猗窩座と対峙した。
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