□鱗滝左近次
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昔は二人でよく修行をしていた狭霧山。
凛人がいなくなってからあまり寄り付かなくなってしまった第二の故郷。

そこへ冨岡と凛人は足を運ばせていた。

「相変わらずここは霧が深くて空気が薄いね。」
「そうだな。」

地面を踏みしめると、突然矢が飛んできて凛人は軽く避ける。

「この仕掛けも懐かしいな。」

次に冨岡が地面を踏みしめると石が飛んできて身を翻す。

「義勇、一発でも当たったらどちらかをおんぶして鱗滝さんのところまで行くのはどうだ?」
「相変わらず勝負事をしかけるのが好きだな。」
「楽しいじゃないか。」

ははっと、楽しそうに笑いながら凛人は襲い来る仕掛けを華麗な身のこなしで避け、木の幹を蹴り飛んで進んでいく。
冨岡も負けじと仕掛けを事前に避けて飛んできた竹を斬りふせる。

結局どちらも一発も当たる事なく、狭霧山の仕掛けを抜けて麓まで降りてきた。

「なんだ、つまらないな。」
「背負って欲しいならしてやるが、」
「いや、いい。」

自分の前で腰を降ろそうとする義勇を制するが、して欲しかったんじゃないのか?と首を傾げる義勇に話が通じないな!とぺしりと義勇の肩を叩き騒がしく会話をしながら二人は歩みを進めた。
そんな様を鱗滝は家の前に立ち見ていた。
ああ、二人の愛弟子が帰ってきた、と。

鱗滝の姿に気づくと、凛人は途端にばつが悪そうな顔をする。
そして歩みも少しばかり遅くなる。
それに隣で歩いていた冨岡も気づき、いかないのか?と問いかける。
凛人は鱗滝に会いたかった。
だけど、冨岡に再開した時と同様に鬼である自分を軽蔑するのではないかと不安だった。
そんな思いを汲み取ったのか、鱗滝は自分から歩み寄り、そして凛人の目の前までいく。
凛人は顔を俯かせ、前を見れない。
鱗滝はそんな凛人を抱きしめて、言った。

「帰ってくるのが遅い。よく戦い抜いた。」

耳から聞こえた声は、嗄れた懐かしい声。鱗滝の厳しくも優しさを含んだ声を聞いて、凛人は胸の中で、声を殺して泣いた。
そんな様を見て冨岡は、凛人もやっぱり泣き虫だ、なんて思っていた。
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