カラ松恋愛事変

□カラ松、風邪引いたってよ
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時雨がチョロ松と共にもう一度部屋の中に入ると、カラ松はぐっすりと眠っていた。

「折角お見舞いに来てくれたのに、」

時雨を気にかけてチョロ松はそう言ったが、時雨はそれに対して何も言うことができなかった。
心配で家までついてきてしまったけど、本当は来ない方が良かったのだろうか…。そう思ってしまっていたから。

はぁはぁ、と息荒く、熱にうなされ眠っている。それをどうにか緩和させてあげたくて、自然とカラ松の頬に手を触れる。
その頬はふよふよと柔らかくて、触り心地がよかったが、熱を持っていてとても熱かった。

「薬とかはもう飲んだんですか?」
「さっき、おそ松兄さんが飲ませたんだと思うけど…
ご飯食べさせたのおそ松兄さんだから」
「そうなんですね」

お昼を食べた後に薬を飲んだというなら、もう少ししたら解熱剤が効くはず。
早く治って、また私に笑いかけてほしい。

頬に手を触れて少し表情が和らいだカラ松の顔を見ながら、そう願うことしか時雨には出来なかった。





チョロ松は氷嚢をカラ松の頭に乗っけてから、時雨の方を伺う。
カラ松の頬に手を当てて見下ろしている時雨を見て、チョロ松はその姿に目を奪われてしまっていた。

なんて優しい目で、自分の兄を見つめるのだろう。

むさ苦しい男ばかりの我が家に女の子がいる、それだけで心臓の鼓動を荒げて緊張していたチョロ松だったが、
緊張しながらも、時雨とカラ松二人の間に入り込めない空気感のようなものを感じていた。

時雨からカラ松の方に視線を向けると、とても穏やかな顔をして、眠っている。
こいつは分かっているのだろうか。
女の子に手を差し伸べられて、自分がそれに無意識に甘えていることに。
そして自分が天使だ女神だと謳っている彼女がお前の心配をしてわざわざ家に来て隣に座っていることを。
カラ松と時雨二人を見て、このやろうと羨ましがる気持ちを少なからず持ちながらも、どこか微笑ましく見つめている自分がいることにチョロ松は気づいていた。

時雨がそろりと触れていた手を離そうとすると、カラ松の顔もついてきて、すりすりと頬ずりをする。

「カラ松、実は起きてるんじゃないか?」

そう訝しげにチョロ松はカラ松の顔を覗き込むが、規則正しい鼻息を鳴らして相変わらず眠りこけている。

時雨も時雨で少し困ったように苦笑いしながら、名残惜しそうにするりと手を離す。

「早く元気になってね。」

そう言って、乱れたカラ松の髪を撫でて耳にかけると、その場をすくりと立ち上がる。
それに合わせてチョロ松もその場を立ち、襖へと向かった。



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