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□煉獄 杏寿郎
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鬼殺隊の隊服を着た鬼がいた。日輪刀も所持しており危険極まりないことであるが、特異な事に人間を守り、鬼を斬り伏せていた。
産屋敷に訪れた煉獄が、輝哉に上記内容を報告した。報告を受けた輝哉は、
「そう。」
表情に影を落とし、呟いた。
「人を助けていたといっても鬼は鬼、その場で斬首できなかったこと、誠に悔やまれます。申し訳ありません。次会ったときには必ずその首を、」
「杏寿郎。」
「はい、お館様。」
声音が暗くなったことを感じ、自身の不始末にお館様の気分を沈ませてしまったと思った煉獄は、口早に言葉を紡で謝罪をしたのだが、
「顔は見たのかい?」
輝哉の言葉に、煉獄は思わず顔を見上げる。
思い出される、狐面を切った後に月の光に照らされて見えた、あの悲しそうな、全てを憂いたような表情。
「…少しだけですが、見ました。」
「見知った顔だったかい?」
「いえ、私の記憶にはない顔でした。」
煉獄の話を聞いた輝哉はまたも、「そう。」と悲しげに呟いた。
「杏寿郎、次にその鬼と会った時は、生きたまま私の前に連れてきてほしい。」
「…生きたままですか?」
「そう、可能な限り、傷をつけず、連れてきてほしい。それは隊士全員にも伝えようと思っているのだけど、出来るかな?」
「…お館様の仰せのままに。」
いつもの煉獄ならば、
鬼は斬滅するべき!お館様のお考えがあるとしても全力で反対する!とまで言いそうだが、反論することなく引き下がった。
そんな煉獄を見て、輝哉もまたにこりと一つ笑って裏へと消えていった。