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□竈門炭治郎
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「凛人は鬼です、ですがあの子もまた、人間を喰べることなく、眠ることで賄っています。」
あなたの妹さんと同じように。
座敷にて、目の前で鎮座する珠世は言った。
禰豆子と同じ、眠る鬼。
凛人という鬼は、人間を喰らうことなく、人間を守り続けている。
そんな鬼を目の前で見れて、炭治郎は希望を見出していた。
人間を守る鬼が、この世に存在するのだということを。
「凛人さんからは、人間の匂いも強く香りましたが、他の鬼とはまた違う鬼舞辻無惨の匂いもしました。凛人さんという人は一体…。」
そう炭治郎が言った言葉に、珠世は目を見開きながらそれを聞いていた。
やはり、睡眠をとればとるほど人間の血が濃くなっているのだ。
だが、他の鬼とは違う、鬼舞辻無惨の匂いが香ってくる。
凛人は、やっぱり…
珠世が考え込む中、炭治郎も返答がないことに内心焦っていた。
凛人さんのことをもっと教えてほしい、禰豆子の今後のためにも。
そう願うのだが、珠世は、凛人のことを必要以上には語らなかった。
理由は一つ。
今凛人は、鬼からも、鬼殺隊からも追われている。
どこから情報漏洩するとも限らない。
鬼からも、鬼殺隊からも、どちらにしろ捕まれば、凛人が殺されてしまうことは一目瞭然であった。
珠世はなんとしてもそれを阻止したかった。
勿論、研究対象として、というのもあるが、それ以前に、長く彼女と共に過ごしすぎた。
単純に言えば、情が湧いてしまっているのだ。
兪四郎と同じように、凛人にも、まるで家族のように、傍で生きててほしいと、そう思っているのだ。
そんな珠世に、炭治郎もむず痒い思いを抱えながら、香ってくる珠世からの匂いを嗅いで、尋問することを諦めた。
どんなに聞いても、珠世は喋らないと分かったから。
そんな燻る思いを抱えながら、炭治郎は珠世の邸宅から出発した。
また、あの狐面をつけた凛人という鬼と会い、話してみたいと思いながら。