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□見舞い
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自分の体にすっぽりと埋まってしまう凛人に、小さいなと思った。
こんなに自分よりも小さな身体に、俺は守られた。
たくさんの血を流し傷を受ける凛人を見ていることしかできなかった。
守られているだけの自分が不甲斐なくてどうしようもなかった。
凛人は鬼だ。
俺よりも強い力を持っている。
だとしても、俺は、凛人を守りたいと思った。
抱きしめた体を離し、凛人の目からぽろぽろと溢れる涙を指で掬う。
「本当に感情が表に出るようになったな、見違えたぞ。」
凛人の頭を撫でながら、煉獄は凛人とこんなにも話が出来るようになったことを嬉しく思っていた。
「最初の頃は能面のようだったのに、凛人は意外にも泣き虫なところがあるんだな。」
そう言うと、凛人は不快感を露わにして煉獄を睨む。だが全然怖くない。可愛らしくて思わず吹き出してしまうほどに。
凛人が泣き止むまで頭を撫でる。
凛人は鼻をぐすりと啜らせながらようやく泣き止んだ。
「大丈夫、ありがとう。」と、どこか恥ずかしそうに言う凛人に、煉獄は胸の奥がざわつくのを感じた。
今まで感じたことのないような感情が沸きおこっているような気がして、気をそらすように凛人から少し視線をそらし話をふる。
「そういえば、最近も鬼狩りにいっているのか?」
「いや、ずっと寝てた。行きたくても刀が無くて。」
「ああ、そうだったな。」
上弦の参 猗窩座と交戦をした時、凛人の持っていた日輪刀は折られてしまった。
鬼殺隊の隊士であれば刀鍛冶に打ち直しを依頼できるが、相手が鬼となるとそうもいかないだろう。
何よりお館様に会うことを完全拒否している凛人の立場であれば尚のことだ。
どうしたものか、と煉獄が悩んでいると、ある事を思い出した。
「凛人、鬼殺隊であった頃に使ってた凛人の刀は冨岡が所持しているらしいぞ。」
「…冨岡。」
「そうだ、以前ちらりと聞いたんだ。冨岡に事情を話して取りに行けば、…。」
そこまでいって煉獄はまた頭を悩ませる。
あの冨岡が、素直に刀をわたすだろうか、と。
凛人と二年ぶりに対峙した際に刀を探していると聞いた煉獄は、少し聞き込みを行なった。
すると凛人が生前使用していた刀は冨岡の家で保管されていると聞いたのだ。
ならば取りに行けばいいかという話でも無く、煉獄の脳裏に浮かぶのは、眼光鋭く、凛人の首を斬ると言い放った冨岡の姿だ。
未だに同じ気持ちなのだろうか。
そもそも凛人に以前問うた時、冨岡の事を覚えていない。まだ会えない、とも言っていた。
俺が取りにいくのも筋違いだろうしな。
そう考え、煉獄はまた頭を悩ませていると、凛人が口を開く。
「義勇に会いにいく。」
そういった凛人は、以前のものと明らかに違う、決意を含ませていた。