□煉獄家
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案の定弟や父からはこの者は誰だと問答された。
凛人は本質は鬼であるが、日の光を浴びるようになってから殊更鬼の気質はなりを潜めていた。
戦闘の際はまた別だが、日常生活を送る分には人間のようだった。

今この場で凛人は鬼だと言えば余計な混乱を招くほかない。
だから、凛人は鬼殺隊の隊士で階級は己、共に戦う仲間であり、俺の見舞いに来てくれたことを伝えた。
人間だった頃の話ではあるが、嘘ではない。
そう言うと、何故か父と弟は訝しげな顔をして本当にそれだけか?など聞いてきた。だが、質問の意図が分からず、是と答えた。

そんな問答の中、凛人は千寿郎が作った朝餉を食べていた。
後でこっそりと、鬼は食事をとるのか?と質問をしたら、
「久方ぶりに食べた。とても美味だった。」
と、それはそれは嬉しそうに答えた。千寿郎の作る料理をとても気に入ったようだった。
そのことを千寿郎に言うと、千寿郎もまた嬉しそうに頬を綻ばせた。

冨岡に会いにいく、と凛人は言った。
冨岡が凛人にどう対応するのか予測つかないため、自分も同行することを凛人に言った。
だが、自分は療養中の身。
今の体で長距離を移動するのは些かきつかった。
だから、一週間という期間をあけて、体も幾ばくか回復したら冨岡に会いに行こうと凛人と約束した。
それに納得した凛人は、一週間煉獄家にお世話になった。

父とは比較的あまり話すところは見なかったが、弟の千寿郎とは関係性を築いていた。
千寿郎が素振りをしていると、とてとてと隣に立ち指南を始めた。体術訓練も共に行うなど凛人は意外にも指導熱心であり教え上手だった。

「誰かに教えていたのか?」
「いや、これが初めてだ。恩師の真似をしてる。変なところがあったら言ってほしい。」

恩師、というのは冨岡や凛人へ呼吸法を指南した者のことだろう。元水柱の鱗滝という者だったと思う。
凛人の普段の剣戟や身のこなしから見ても、素晴らしい師匠だったのだろうと感じた。

「凛人さんは素敵な人ですね。」

そう言う千寿郎に、うんうんと頷く。

「強くて、優しくて、可憐で、兄上の嫁候補ですか?」

更に続けて言った千寿郎の言葉に思わず杏寿郎は吹き出した。
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