□鱗滝左近次
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鱗滝は凛人が鬼となった事を全く責めることはなく、腹が減っただろうと大量のご飯を用意してくれていた。
それを冨岡、凛人は口にどんどんと放り込んでいく。

鱗滝や、隣で頬張る冨岡も、凛人の食べっぷりに目を瞬かせ、鬼も食事を取るのだなぁと不思議がった。
凛人は生活している分には鬼の気配はまるでないし、太陽の下でも活動が出来る。人間に戻ったのではないかとすら思えるが、回復の速さは異常だし、実質は鬼なのだと凛人は説明する。
確かに、ここにくるまでの道中、二体の鬼と遭遇し、戦闘となった。戦闘中は鬼の血が活性化するのか、凛人の鬼の気配は尖り、匂いも濃くなった。凛人はまだ鬼なのだと再確認する瞬間であった。
飯を食べられるようになったのも、太陽に当たっても大丈夫になったのも最近のことだ。
凛人の血を調べている者曰く、最近更に凛人の血の変化が凄まじいのだという。
このまま凛人の血を研究すれば、鬼が人間と戻る薬が完成するかもしれない、だがその薬がなくとも凛人は人間に戻る日が来るかもしれないとその者は言ったそうだ。
だが、このことは鬼側には絶対に知られてはいけない。
太陽を克服したなんて鬼舞辻無惨に知れれば、その身を喰らうため大量の鬼が派遣され、凛人は捕まり連れ去られてしまうだろうことが予測された。
実際に、凛人は二年前、上弦の鬼に囲まれ襲撃にあったことがあった。
鬼舞辻無惨は、実際問題凛人を探しているのだろうことが伺えた。
そして、最近上弦の参に出会ったため、凛人の存在は鬼舞辻に認識されているはず。
だから夜明けに鬼と遭遇して太陽を克服したことが知られないよう気をつけろと言われていると、凛人は鱗滝と冨岡に話した。

なら、産屋敷と情報を共有して凛人を匿い、鬼殺隊で撃退する算段を立てるべきじゃないかと冨岡は進言した。
だが、凛人は首を振り、駄目だ。と言った。
なぜ駄目なんだ、と質問するが、
「分からない。だけどあの方は何かを危惧している。私はあの方の言うとおりにしようと思う。」と凛人は言った。

それは凛人が産屋敷にいくことを全力で拒否している原因でもあるのかと冨岡は思った。
凛人は続けて言った。
本当はこの情報も秘密であり他の人に漏らしてはならない事だ。だけど、生前から助けてもらい信頼している鱗滝さんと義勇には自分のことを伝えておきたいと伝えたら、苦い顔をしながら、なんとか承諾を得た。
だから他言無用でお願いしたい、と凛人は頭を下げた。

そのことに、今度は鱗滝や冨岡が苦い顔をする。それは凛人が危ない状況であることに変わりがないからだ。
だが、自分たちを信頼し話してくれ、凛人が頭を下げてお願いしていることを無下にするわけにはいかない。

これからは凛人の傍には冨岡が付くことを決めた。
そうすれば、鬼の襲撃があった時も力になれるし、鎹鴉で応援を呼ぶこともできる。
一人で鬼に襲われずに済む。

いいな?と強めの口調でいった冨岡に、凛人は分かった、と頷き話は締めくくられた。

「そういえば鱗滝さん、狭霧山の仕掛けはいつも常備されているんですか?」
「いや、お前たちが帰ってくると思って改めて仕掛けておいた。」

そういった鱗滝を、え?と二人で目を見開き凝視する。
そんな二人を見て、鱗滝は面の下でほくそ笑み、

「強くなったな、二人とも。」

そう言って、鱗滝は二人の頭を撫でた。
冨岡、凛人は褒められたことになんだかくすぐったさを感じて、幼い頃と同様に顔を俯かせ、少し顔を綻ばせながら頭を撫でられることに甘んじた。
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