□甘露寺蜜璃
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「私ね、凛人のこと同い年ぐらいだと思ってたの。しかも凛人の話ってなんだかいろんな人に聞く機会が多くて親近感湧いちゃってたの、馴れ馴れしくしてごめんね。というか呼び捨てってなんか恥ずかしいね!急に距離が縮まった感じがするというか。けど嬉しいからこのまま呼ぶね!凛人!」

きゃっ!といって頬を真っ赤に染め上げて照れ始める甘露寺に凛人は積み上げられた団子を一本取って口に含みながら聞く。

よく喋る子だな、感情も顔に出やすいしころころ変わる表情がまたなんとも可愛らしいというか愛らしいというか。

そんなことを思いながら呆けながら甘露寺の顔を見つめていると、

「凛人も!私のこと名前で呼んでね!私だけ呼び捨てなんておかしいもの!」
「えーと、」
「私の名前は蜜璃よ!」
「…蜜璃。」
「恥ずかしい!でも嬉しい!」

わーいと喜びを体現して抱きついてくる甘露寺の体を凛人はもう驚くこともなく優しく抱きしめ、そうかそうか、と背中を優しく撫でる。

「凛人の話を聞いてたっていってもいい話ばかりだからね!無理やり鬼にされたのに人間を守るって強い信念を持って戦ってるところとか、本当にカッコいいなって思ってたの。私も早く会ってみたかった。でも中々会えなくて、話だけ色んな人から聞いちゃってたの。」

ごめんね、とまた謝罪をしてくる甘露寺に、凛人は気にしてない。とまた背中を優しく撫でた。
そんな凛人の優しさに、甘露寺は頬を染めながらほくそ笑み、凛人から体を離した。

「私、絶対冨岡さんとのこと誰にも言わないからね!秘密にする!」
「ああ、そうしてもらえると助かる。」
「誰にも言わないから!ね?」

恋愛相談乗るよ?女の子同士でしか出来ないもんね!と上目遣いで期待を込めてこちらを見る甘露寺に、凛人は天を仰ぎ、何故か胡蝶カナエのことを思い出していた。
カナエさんも恋愛噺が好きだったなー、と思い、今隣にいる甘露寺の顔がカナエの顔と被さり懐かしさを感じた。

「冨岡さんとは幼少から知り合いだったのよね?」
「鱗滝さんの元で修行した時から一緒にいたな。」
「その時は冨岡さんの事、どう思ってたの?」
「…あの頃は泣き虫なあいつを揶揄って楽しんでたような気がする。」
「ええ!冨岡さん、泣き虫だったの?」
「すぐに泣き言を言うから私が鍛えてやらなきゃって思ってた。どちらかというと弟のように思ってたな。」
「そうなの。」

あの頃を思い出して微笑む凛人を隣で見て、
冨岡さん、すごく頑張って凛人を口説いて手に入れたのね、と甘露寺は胸をきゅんとときめかせていた。

「だけど、あいつは泣き言を言わなくなった。弱さを見せなくなった。そんな義勇を見て少し寂しいと思いながら、頼りにもしてたな。」

きっかけは錆兎の死だろう。
そこから義勇は変わった。
弟のように思ってた私の印象も変わった頃でもあった。

「どうして、凛人は冨岡さんと離れた方がいいと思ったの?」
「私が鬼だからだ。」
「鬼なのかもしれないけど、凛人は人を襲って喰べる鬼と違うじゃない。」
「…蜜璃。」

凛人は隣に座り俯く甘露寺の頭に手を乗せ撫でる。

「ありがとう、そう言ってくれて嬉しいよ。」

その言った凛人の表情があまりにも悲しそうで、今までの境遇を思い蜜璃の目には涙が溜まる。

「凛人が鬼でも関係ない、冨岡さんは凛人に傍に居て欲しいと思ってるはずよ。」
「ああ、そうかもな。」
「凛人は、冨岡さんの事好き?」

甘露寺の言葉に、凛人は少し驚きながらも、はにかんだ表情を浮かべて、
「愛してるよ。」と言った。
そんな凛人は、陽の光に当たってキラキラと美しく輝いていた。
その姿は鬼とは到底思えない、ただの恋する女性そのものだった。

「いいなぁ、私も好きな人が欲しい、愛したいし愛されたい。」
「蜜璃は素敵な女性だ。直に現れるさ、もしかしたらもう現れてるかもしれないぞ。」
「そうかなぁ。凛人が男の子だったらな、本当にカッコいいもの。」

冨岡さんが羨ましい。
そう言った甘露寺に、なんだそれはと凛人が口を開けて笑った。
その表情はとてもあどけなくて、素を見せてくれたようで、
自分に心を開いてくれているかのように思えた甘露寺はとても嬉しく感じた。








「あのね、すっごく気になってた事があるんだけど、聞いてもいい?」
「なんだ?」
「あのね、聞いちゃうよ?ほんとにいい?」
「なんだそんなに顔を真っ赤にして。」
「…冨岡さんって、閨事の時ってどんな感じなの?」

突然の言葉に吹き出し噎せこむ。
そんな凛人をまた置いてけぼりにして、甘露寺は興奮を露わに口早に言う。

「だって冨岡さんってどこか抜けてるところがあるというか、そういうことに興味ありませんって顔してるのに以外とそうじゃないんだーって思ったらなんかとてつもなく興奮するというか!しかも長年の思いが報われたあとって、なんか凄そうというか、これ以上は言えない!」

きゃー!と真っ赤になった顔を覆って奇声をあげる甘露寺を横目に、さてと、お茶のお代わりでも作るかと言って凛人は席を立った。
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