□煉獄 杏寿郎
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短期間のうちに、街から人がぽつりぽつりとと消えていく。
原因を探索するため隊士を何人か送り込んだが、全員消息を絶っている。
その情報を元に、煉獄は目的地まで向かっていた。

街へ近づいていくほど不穏な空気が立ち込めて、鬼の気配もどんどんと近づいてくるのが分かる。強力な鬼なのかもしれない。
心してかからねばなるまい、と開けた場所から街を見下ろす。
すると、鬼殺隊隊士だろう者が一人、鬼に対峙しているのが見えた。
隊士の背後には、気絶した村人がいて、鬼殺隊隊士も中には含まれている。
守りながら戦っているのか。
これはいけない、早く助太刀せねばと思い動こうとしたが、何かがおかしい。

鬼と何事かを話しているが上手く聞き取れない。
段々と近づき聞こえてきた会話に驚く。

「何故鬼であるお前が人間を喰らいもせず守っている!」

そう叫ぶと、鬼は身体から無数に生えた腕を隊士の方へ伸ばし、体を捉え、口の中へ放り込もうとする。
危ない…!と思ったその一瞬、腰から抜いた刀で鬼の首を斬り伏せた。

自分の出る幕はどこにもないほど、素晴らしい剣戟であった。

鬼を斬り伏せた隊士の近くに到着した頃には、鬼の体はさらさらと消えていた。
背後にいた村人や隊士の様子を見ると規則的な呼吸をしていて、皆んな生きているようだった。目立った傷もない。

「君が守ってくれたのだな、ありがとう。鬼殺隊の隊服を来ているが、君は何者だ?」

煉獄が、目の前にいる隊士だろう者に話しかける。
鬼殺隊の隊服をきて、腰には日輪刀まで所持している。
だが、明らかにその気配は、人間ではなく、鬼だ。
くるりとこちらに向き直った相手に、反射的に煉獄は腰に据えた刀に手をかける。
狐面をつけていてその顔が見えないため少年か少女かも分からない。表情も読みとれない。
だが、殺意は感じられず、戦う意思がないのがはっきりと分かる。

だからといって、鬼が隊服を着て日輪刀まで所持しているなど言語道断。
ここで斬りすてようか。
煉獄は刀を引き抜き構えるが、目の前の鬼は一向に刀を構える気がない。

「君が鬼であるのなら、俺はお前を斬らねばなるまい。」
「……。」
「その剣や隊服は、隊士から奪ったのか?それとも、君は元隊士だったのか?」

煉獄が質問をするが、狐面の鬼は一向に返答する様子はない。
仕方ない、と煉獄は一歩を踏み出し飛び出した。


炎の呼吸 壱の型 不知火


ドン!と大きな音を立て、爆速で向かい斬りふせる。斬り伏せたかに思えたそれは残像に過ぎず、斬れたのは、狐面だけ。

ぱかりと真っ二つに割れ、顔が見える。
その表情は、とても悲しげで、何故か、目が惹きつけられる。

「戦い、たくない。」

そう一言告げると、ふっと姿を消してしまい、煉獄は追いかけることも出来なかった。
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