★ 小説置き場 ☆

□★ お前が見えない ☆
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 「シンジはいい人なんだからっ!」

急にあいつはそういった。

 つい昨日、オレがヨスガで用事をすませぶらぶら歩いていたとき、ちょうどあいつに出くわした。

オレは無視して通り過ぎようとしたが、運悪く気づかれてしまい、追っかけてきた。

オレは仕方なく立ち止まりため息をつきながら後ろを振り向いた。

「なにか用か?・・・」

オレは冷淡に言葉を放ったのにもかかわらずあいつはまぶしいくらいの満面の笑顔で近づいてくる。

オレは目を細めて黙ってみていた。

「シンジじゃない!久しぶりね〜!」

「それがどうした」

「んもう、かわいくない〜〜!」

あいつはそんなふうに言いながらも特におこっているわけじゃなかった。

・・・・いや、別におこらせようとしたわけじゃないんだが。


「珍しいわね、シンジがヨスガにくるなんて」

「いたら悪いか?」

「そうはいってないでしょ」

あいつは苦笑いしてかかえていたポッチャマを下に下ろしていた。

「用事があったんだ、・・・好き好んでここにきたわけじゃない」

「ふ〜ん・・・あっ!サトシ達にも知らせてくる!」

「やめろ、うるさくなるだけだ」

「え〜〜・・・つまんないの〜・・・」

あいつは急にしゅんとしてしまった。

オレはさっさとここから立ち去ろうとしたそのときだった。

「あ、見ろよ、あれシンジじゃん?」

「ほんとだーーー!あいつがここに何のようだよ」

「女つれてるぜ」

どこから沸いてきたのか、わけのわからない連中が近づいてきていた。

あまりいいやつらじゃないのは雰囲気ですぐわかった。

「あれ?・・・なに、あの人達・・・?」

「しらん、・・・オレの知り合いじゃない」

そいつらはどんどんこっちに向かってきて目の前でとまった。

オレはいぶかしげに眉をひそめると、そいつらはケタケタと馬鹿にするような笑い声を上げた。

「おいおい、あんたあのエリートトレーナーのシンジだろ?俺達の街に何の用だよ?」

はぁ、オレはため息をついた。  こういう連中に絡まれるのは慣れていた。
 
こういうときは無視して立ち去るのが一番・・・・・・


「ちょっと!あんた達なんなのよ!」

・・・・しまった、こいつがいるのを忘れてた。

あいつはどんと腰に手をあてて挑むような姿勢で向かっていった。

「あぁ?なんだ姉ちゃん?シンジの連れか?なさけないな〜、シンジとあろうものが女とイチャイチャするなんて、こりゃビッグニュースだぜ?」

ハハハハハ・・・と連中は笑っていた。

あいつは何のこれしきといった余裕の表情で

「あら?間違えられちゃこまるわ。私はシンジの連れじゃないし、なんでシンジが女の子といちゃついちゃいけないわけ?なんで情けないっていえるのよ!あんた達のほうがよっぽど情けないわ!軍団でしか人に立ち向かえないなんて卑怯者のすることよ!」


言うときは言うやつだな〜、なんて感心・・・・・している場合ではなかった。

連中はあいつの一言に切れたらしく顔を真っ赤にさせてにらんでいる。

さすがのあいつも怖くなったらしくちょっとひるんだ。

オレは助け舟をだそうとあいつをひっぱろうとしたとき連中の真中にいたやつが言った

「卑怯者?はっ、そんなこというならこの最強とおそれられているシンジなんか、冷酷で残酷な奴だって有名じゃないか!」

「ちがう!!!」

あいつはオレもびっくりするくらいの大声で叫んだ。

「お、••••おい。」

オレはいぶかしげにあいつの顔を覗き込んだ。

あいつは泣く一歩手前の顔をしていた。

「シンジは、•••••シンジはっ、••••シンジはいい人なんだからっ!」

あいつはわけの分からない言葉を連中に投げかけ、にげるように走って行った。

オレは仕方なく後を追った、
(「シンジはいい人なんだからっ!」)

あいつがいった言葉が胸に響いていた。


「おい、どこまで行くつもりだ。」

オレは多少息を乱しながらも、なんとかあいつに追いつくことができた。

「シンジは••••••」
急にあいつは小さい声でといかけてきた。

「あんな事いわれて悔しくないの?悲しくないの??」

涙声になっているためか、息がきれているせいか、あいつはとても苦しそうにしていた。

「別に、あんなのには慣れているからな。」

オレは難なくそう言った。
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