長編[インセインハート]

□第一章1【予兆と…】
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午前7時30分――――

「ちょっ!待ってってば兄貴!」
2階から勢い良く駆け降りて来たのは、僕の双子の弟の栗だ。
明らかに寝起きだという事が良く分かる。慌ててしたであろう制服のネクタイは曲がっているし、シャツもはみ出ている。

「おはよう栗。」

どうやら朝に弱いらしく、起こしてもなかなか起きない。それで毎朝こういった感じで、高校に通うのだ。

「起こしてくれてもいいじゃんかーケチィー。」

「何言ってんだよ。何十回も起こしたよ?ほら、ネクタイ曲がってる。シャツもはみ出てる。」

「ん。あんがと。」

ふぁー…っと、眠そうに大きな欠伸をかいて、まだ寝足りなさそうに目をショボショボさせている。
僕と栗は一卵性の双子だ。身長も勿論顔も驚くほどそっくりだ。
だが、唯一違う所があるとしたら、性格くらいだろう。弟は、どちらかというと、ポジティブ思考の持ち主で、人付き合いに長けている。
同じ顔でも、自分には持っていない物、自分には到底出来そうにない物を持っている彼が、時々羨ましく思う事がある。

人付き合いの苦手な僕にとって、それはある意味、コンプレックスの固まりでしかないのだ。
人付き合いが苦手な為、反応に困る時は、とりあえず”笑顔”でいるようにしてきた。

そうしてきたせいか、いつの間にか、周りからは「王子様キャラ」で通っていた。

滑稽な話だ。

僕は、皆が思っているほど綺麗な人ではない。

それでも僕は、この”笑顔”と言う名の仮面を、脱ぎ捨てられないでいるんだ。

それが例え、家族の前でも―――
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