宝物

□眠れない夜
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その日豪の学年は合宿で留守にしていた。
テレビは見放題、宿題も誰にも邪魔されない
マシンのメンテだって集中できるしおやつの
取り合いをすることもない、烈は上機嫌だ。
「でも・・」
ふと隣を見て何かが物足りない
寂しさもすこし感じていた。
「豪がいないとなんだか寂しいな」
夕食時改造がぽつっとつぶやいた。
「そうだねぇ、いつもやかましいから」「ぼくはせいせいするよ毎日ふりまわされてるんだからさ」
とは言ったもののやはりどうしても隣が気になってつい見てしまう。
風呂に浸かっていても『レツあにきー!一緒にはいろうぜー!』なんて強引に割り込んでくる
元気な声がしないのはどこか物足りなかった。
「お母さん、おやすみなさい」
「おやもう寝るのかい?」
「うん明日も早いからね」「ひとりで大丈夫か?」
「お父さんぼくもう子供じゃないんだからね!」
「あはは、ごめんごめんおやすみ」
「おやすみなさい」
電気を消してベッドの中へ潜り込む
元から部屋も別々でひとりで寝るのは
当たり前なのに。
その日はいつもと違っていた。
何かが足りない。
オバケがこわいとかそういうわけじゃない。
「寂しいよ、ゴー」
良江と改造も寝室に入りそれぞれの就寝前の時間を楽しんでいた。
その時すこし遠慮がちにノックをする音
ドアを開けると枕を抱えて恥ずかしそうに
立っている烈の姿があった。
「どうしたの?」
「あ、あの、あの、あのさ」
「ん?」
「ゴーにはぜっっったいナイショにしてくれる?」
頬を真っ赤に染めて烈は小さな声でつぶやく
「一緒に寝てもいい?」良江は「しょうがないわね」といいながら
もどこかうれしそうに烈の頭を撫でて
改造はスペースを空けてくれた。
ふたりの間に挟まれて烈は安心したのか
すっと眠りに入った。
「しっかりしててもまだまだ子供だね」
「素直になれないだけなんだな」
「レツ、今日は安心して寝なさい」
「おやすみ、レツ」
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