俺と君と私と

□03.さぁ、君も練習に参加してみない?
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学校の日となった。

男子や女子がたくさん話しかけてくれて、友人も徐徐に増えていった。

「でさ、苗字君が虫を追い払ってくれたの」

「うわっ。苗字ってそんな顔で意外と虫につえーんだな。
おっどろき!」

「そうよ!そこらへんの男子と苗字君は違うんだから」

いえ、ホントは虫は大っ嫌い。

だけど、男子としてすごすのだから、これぐらい…と頑張った。

うぅ、虫ホント気持悪かった…。

「苗字さん!」

不意に例のあの人の声に呼ばれビビる。

「な、な、な、ななにかな…?」

声の主、幸村君は笑う。

「なに脅えてるのかい?
それよりさ、今日部活見学きなよ」

選択肢、YES or はい。

「行く行く。だからこっち見んな」

そう言って溜め息をつく。

本当に疲れる。いや、幸村君に憑かれる。

するとさっき話していた女子が喚声をあげて言った。

「イケメンがセットになってる!!」

お願い。

イケメンなんてハズカシイからそんなふうに言わないで。

それに、幸村君とセットにしないで。

死ぬから。

「よかったね。苗字さん、イケメンだって(笑)」

「アハハハハ」






「みんな、今日見学にき苗字名前さんだ。もう入部予定なんだよ」

「よろしくお願いします」

ふと顔を上げると、大きく手を振ってる人を見つけた。

「あ…丸井君」

私も笑って小さくふりかえす。

なんか癒される。

「じゃぁ、みんな自己紹介して」

幸村君がそう言うとみんな私に自己紹介しはじめる。

「真田弦一郎だ」

「柳蓮二だ。人の個人情報が知りたいときは…いつでも聞け」

「仁王雅治。詐欺師じゃの。プリ」

「仁王君、苗字君が困っているでしょう。
少しは…、あ、申し訳ありません。柳生比呂士です。
仁王君に困らせられたときは言って下さいね」

「ジャッカル桑原だ。丸井とダブルス組んでる。よろしくな」

「俺は知ってるだろぃ?丸井ブン太。
ちなみに名前で呼んでくれるとうれしいぜ」

「あ、うん。分かった」


テニス部はやっぱり個性的な人が多いと思った。

「しかし珍しいですね。幸村君から連れてくるなんて」

そう言って首を傾げる柳生君。

「そうだろぃ?俺も思った」

そう言ってブン太もうんうんと頷く。

よく見れば、歓迎されているんだけど、どこかみんな戸惑ってるようで…。

本当に幸村君が誰かを連れてくるなんて珍しいんだ、と思った。

「さ、部活を始めるよ!」

幸村君がそういって、練習が始まった。











「ねえ、幸村君」

「ん、なに?」

私は、みんなを座って見ていた幸村君の横に座り声をかけた。

幸村君は笑顔で返事をしてくれた。

「なんで、俺を部活に誘った?
みんな、幸村君から誰かを連れてくるのは珍しいって。何故?」

そう言うと幸村君は「あぁ」と呟いて、遠くを見るような目をした。

「俺が中3のときさ、不二のいる青学に全国大会決勝で負けて…。
原因はね、今の苗字さんに足りていない"あるもの"が、そのときの俺達にも足りていなかったからなんだ。
でも…」

小さく息を吐き、私を見る。

「俺達は見つけたんだ、それを。そしたら、全国負けなしさ。
君にも、知ってほしいからね」

そう言って優しく笑う。

その笑顔に思わず…みとれてしまった。

いけないと思い、すぐに正気に戻る。

「さぁ、君も練習に参加してみない?」

そう言って幸村君は立ち上がり、手をさしのべてきた。

「うん」

私もそっとその手をとった。



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幸村君に手をさしのべられたい。


少女はテニスコートへ走った


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