俺と君と私と

□06.君を悲しい顔にさせてごめんね?
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さぁさぁ、ついに前日になりました。

学生の敵、NO.1!!

定期テスト!



「で、今日俺達テニス部て勉強会しようと思うんだけど…どこがいい?」

幸村君はそう言って、皆を見た。

「俺は真田副部長の家がいいと思うっす!広いし」

「残念だが今日は、季節外れの大掃除をしていてな。またの機会にしてくれ」

「じゃあ幸村部長!」

「妹が友人を連れてくるらしくて…」

「じゃあ、柳先輩!」

「すまないが…」



―――――
―――




「なんで、先輩達。今日に限って全員駄目なんっすか!」

あああ、とうめく赤也。

ん?と私は思って聞いた。
「赤也の家は?」

「今片付けてなくて汚いんっす。って、あ!」

そう言って赤也は手をうった。

なにか閃いたらしい。

「ん、なにかいい案あったのか?」

ジャッカルが聞く。

「苗字先輩の家でいいんじゃないっす
か!」



「「「「「「ぉお」」」」」」

みんなが、盲点だと言うように、口々にいい
案だといい始めた。

あ、忘れられてたんだ、私。

「で、いいかな?」

「あ、まぁ。スペースもあるし、みんながよければいいよ」



――帰り道。

いつもは同じ方面の人がいないから一人で帰っているのだが、今日はみんな一緒だ。

みんなと話しながら、楽しい気分にひたっていると不意に…


ポツポツポッザーーー

「あ、雨!?」

「そんなのないだろぃ!?」

「天気予報でも言っていませんでしたし」

「俺の家もうすぐだから、皆走って!」

水溜まりをふみ分けながら、走った。


「はぁ…ついた…」

ベージュの、ヨーロピアンな一戸建て。

それが私の家だ。

「ほら、入って」

鍵を開け、みんなを家にいれた。


「お洒落な家じゃの」

「ありがと。
それで…みんな着替なんだけど……お父さんのでいい?
俺のは、小さいだろうから」

私はTシャツとジーンズに着替え、適当に父のポロシャツやTシャツを持ってきた。

「すまない」

「サンキュ」

「ありがとう」

口々に言って、私の手から服をとり着替え始めた。

別に見ちゃっても平気なんだけど、一応私が女ってことを知っている人がいて…
着替えずらいだろうから、私は自分の部屋に言った。

自分の部屋はまだ女の子らしさをどこか忘れたくないからか、ピンク色が基調となっている。

「フフ。久しぶりだな。誰かを呼ぶのは」

―涼以来。

いけない。

ブンブンと首をふる。

考えないようにしなきゃ。

トントン。

ノック音の数秒後に扉が開く。

みんなだ。

「あ、良かった。お父さんの服、ちゃんと合ってるね」

私は嬉しくて笑う。

「ところで、君の親は出かけてるのかい?家上がり込み、服まで借りちゃったから一言お礼を言いたかったんだけど」

幸村君が、キョロキョロと辺りを見回しながら言った。

「あぁ、両親は事故で死んだんだよ」

私は小さく笑い、下を見て言った。

「だから、一人暮らしだよ。この一人で住むには大きすぎる家に、ね」

シンと場の雰囲気が悪くなった。

幸村君も、気まずそうに目をおよがせる。
ね、みんなそんな顔しないで。

しないでよ。

しないで――

「さっ、勉強始めるぜ!皆」

静かだった空気に響く明るい声。

「ほらほら、みんなそんな顔するから名前にもうつったぜ?
ほらほら、明るく!」

皆顔をあげ、笑った。

「そうだね、ありがとう。ブン太」

幸村君が言った。

「君を悲しい顔にさせてごめんね?さぁ、始めようか」

「うん!」

――みんな、ありがとう。



少女はテニスコートへ走った

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