俺と君と私と
□07.はい、あーん
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と、勉強を始めたのはいいのですが…
「うわー。わからないっす。ってか、もう飽きたー!」
「ガムきれた…。やる気でねぇ」
「ピヨ」
「こら!真面目にやらんか」
とても集中出来る空間ではありません。
「アハハ、みんなおやつにしようか?」
私は、苦笑いしながら立ち上がる。
「おやつっすか!」
「お・や・つ♪」
「ぷり」
単純なやつらめ(笑)
ってか、ブン太。
さっきのあの発言が、私には遠い過去に思えてきたよ。
確か冷蔵庫に昨日作ったガトーショコラが…、あった!
切り分け、皿に乗せて持っていく。
「手作りですか。おいしそうですね」
「すごいな…」
みんなに渡していった。
「では…」
「いただきまーす」
みんな一斉に声を揃えて食べ始めた。
でもふと気になる。
幸村君が全然手をつけてない。
さっきから、上の空で…。
「どうしたの?幸村君」
「あ…、苗字さんか。いや、こんな広い家で苗字さん一人って寂しくないのかな、って考えてたんだ」
「あぁ。前は寂しかったかな。でも、今はいろんな人が遊びに来てくれるからね、大丈夫」
「俺も、また来ていい……?」
「あぁ!楽しみにしてるな!」
そういうと幸村君は満足そうな顔をして、一口食べる。
「うん。おいしい。って、あれ?苗字さんは食べないの?」
「いや、皆に少しでも沢山切ろうとしたら、なくなった。昨日食べたから…」
そこまで言って口をつぐんだ。
幸村君のもっているフォークに、一口大のケーキがささっていて、自分の方に向けられている。
「幸村君!?」
「はい、あーん」
あーん!?
って、いつのまにかみんなから視線が集まってるし、恥ずかしいし…
ってか、間接キス…。
「はい、あーん」
私に向けられているのは、笑顔なんはずですが、笑顔に見えないよ!
「はい、あーんは?」
だんだん低くなっていく声。
やばい。このままあーんをしなければ、身に危険が…。
ムグ。
幸村君のフォークからケーキを食べる。
「いい子いい子」
頭を撫でられた。
「うわっ。幸村だけズルっ。俺も!」
あれ、ブン太。
なんで私に、フォークにさしたケーキ向けてるの?
「はぁ…。仕方ない。一回だけだよ」
ムグ。
「っしゃぁぁぁあああ!」
発狂しはじめるブン太。
たかだかあーんぐらいで…。
「ブン太のくせに、いい御身分だね?」
「それなら幸村だって」
なんか幸村VSブン太が始まってる。
もう私にはとめられない。
取り合えず、頑張れ、ブン太。
殺されないように。
「はぁ。勉強ができんな。もともとこうなる確率は78%だったが…」
「そうですね…。でも」
「俺は好きだな。こういうの」
そういって、私と柳と柳生は笑いあった。
少女はテニスコートへ走った