俺と君と私と

□09.これから良いもの見せてあげるよ!
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「そういえば、明日は関東大会決勝だが、応援来るか?」

テニスウェアに着替えていると、後ろから真田に声をかけられた。

「ん?決勝?すごいね!」

「あー、苗字は知らんか。うちのテニス部は関東どころか、全国常連校だ」

「え、すご!」

知らなかった。

ここがそんなに強いなんて。

まぁ、確かに一人ひとりが強いというのは、なんとなくだが分かっていた。

「その…お前は試合に出なくていいのか?」

確か青学の不二といい勝負とかどうとか幸村が…、と真田はボソボソと呟いている。

「んー、まぁ出たいのも山々なんだけど、俺はまだテニスに大切な"あるもの"を見付けてないから遠慮しとくよ。
…それに、」


「みんなが決勝まで来たオーダーを壊したくないからね」

応援に行くよ、と呟いて私は部室から出た。


関東大会決勝。

相手は強豪校となった青春学園。

「プ。青春…。変な名前」

小さく吹き出すと、幸村君もウンウンと頷いた。

試合は順調に進んでいたはずなのだが…


「ウォンバイ青春学園手塚!7-6!」

S2の真田が手塚に負けた。

タイブレークで競り負けたようだった。

「すまない…」

真田がベンチコートをやっていた幸村に謝る。

真田以外に、柳がS3で負けており、2-2。

S1で勝負が決まる。

「いいんだ。ぼうやとは再戦を願ってたからね」

幸村君はそう言うと、私がいるほうを向いて大きな声で言った。

「苗字さん!これから良いもの見せてあげるよ!」

そう言って幸村君はコートに行く。

「久しぶりだね、ぼうや。ずっと再戦を願ってたよ」

「俺もっすよ。ん、ジャージはおってないっすね。
なら、今回はそのヘアバンド狙おっかな」

「じゃぁ、俺はぼうやの帽子狙おうかな?
まぁ、それは冗談として、俺は前とは違うよ」

「それは俺もっすよ」


試合が始まった。

もともと幸村君はみんなと比べて桁違いに強いことは知っていた。

だがここまでだったなんて…。

でも、相手も強い。

エチゼンリョーマだっけ。

多彩なショットを持っていてみとれる程だ。

「これも…テニスなんだ」

私はボソリと呟いた。

―――――

―――



「ウォンバイ立海大附属7-6!」

勝った…。

越前の天衣無縫がでたとき、正直負けると思った。

この前の越前と幸村君の試合のときも、天衣
無縫で幸村君が負けたと聞いたから。

その後時は流れ、越前と幸村君はとっても努力したけど、幸村君の努力のほうが上だったってこと。

ただそれだけのはずなのに…、

何故か感動した。

「ありがとうございました」

両校が挨拶をして、試合は幕を閉じた。

「すごかった、幸村君」

決勝後の式典のあと、私は幸村君とふたりで話していた。

「ありがと。言ったでしょ?良いもの見せる、って」

「うん!」

「フフ、関東優勝ぐらいでこんなに喜ぶなんて、全国で優勝したらいったい…」

幸村君は私を見て言った。

「だって、ほんとに私、感動したんだもん!…って、あ」

つい興奮して女の子の言葉で喋ってしまう。

恥ずかしい、と思っていると幸村君は声をあげて笑いだした。

「な、なに?」

「いや、可愛いなと思って」

う、と声をもらし、恥ずかしさで、手で顔を
覆う。

「苗字さんー」

「や。手どけない」

顔を覆っている手を外そうとする、幸村君に首をふった。

数分幸村君の手と格闘していたが、幸村君の手が外れ安心したとき……

音をたて、幸村君の唇が私の頬にキスをおとした。
精神的にすごく安心していたから、私のダメージは一万でもはや体力はマイナスで…。

「なななななななにするっ。
それにひ、人が見てたらっ…」

「大丈夫。誰も見てないよ。苗字さんが顔隠すのが悪いんだよ?
しかも頬はでてるし」

「それに恋人同士じゃないし…」

「あれ、もう一回お望みかな?」

「ごめんなさぁぁああい!」

と叫んでから、お互い目を合わせて笑いあう。

永遠に続いてほしい、幸せな時間だった。



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