お試し小説

□chocolate with me
1ページ/1ページ

高校2年の2月、私は決意した。






「お願い、丸井君!お菓子作るの教えて!」





私が教室で丸井君の席の前に立ち、手を合わせて言う。


丸井君は目をパチクリさせた。


「いいけど、なんでだよ?」


私は目をそらす。


でも、そしたら好きな人が視界に入り真っ赤になってしまってうつ向く。


「その、ね。バレンタインデーで、チョコあげようと思って………。」


最後は消え入るように小さい声になってしまった。


丸井君はそんな私とさっきの視線の先を見比べる。


そして意地悪そうに笑って言った。


「わかった。みょうじ、仁王が好きなんだろい?」


゛仁王゛と言う言葉を聞いてしまうと、最近すぐ反応して赤くなってしまう。


今も耳まで真っ赤で、それは図星です、と言っているようなものだった。


「そそそそそそそんなわけないよ!」


「あー、あきらかに動揺してるな。そうか。みょうじは仁王が好きなんだな。」


「ちょ、声大きいよ!」


私は丸井君に言うと、すぐに仁王君を見た。


大丈夫、聞こえてないみたい。


頬を少し膨らませて丸井君を見ると、丸井君は「めんご。」と呟いて顔の前で手を合わせた。


「とにかく、絶賛☆片想い中のみょうじは仁王にバレンタインデーにチョコを渡したいんだな?
で、そのために、天才的な料理やお菓子を作るこの俺に教えてほしいと。そういうことだな?」

゛絶賛☆片想い中゛とかの単語が恥ずかしかったけど、私はブンブンと顔を縦にふる。


すると丸井君はウィンクして言った。


「よし。俺がみょうじが仁王との恋が成就するように、マンツーマンレッスンをしてやる!覚悟しとけよ!」


立ち上がって胸をはって言う丸井君に私は嬉しくて。


笑いながら「ありがとう。」と言った。


丸井君は席につくと、ボソリと耳打ちしてきた。


「で、どこまで料理できるのか?」


私はすぐ目をそらした。


でも、丸井君は私の顔をのぞきこみ、笑いながら言った。


「もしかして…?」


「………うん。全く出来ない。」


「全く出来ないのかよぃ!?」



これは教えがいがありそうだとか言ってるけど、私は本当に料理できない。


典型的な砂糖と塩を間違えるっていうことも、もう経験済み。


ケーキとかクッキーを焼こうとしても、真っ黒けに焦げちゃう。


お母さんだって、「なんでレシピ通りにやってるのに、こんなんになるの?逆に才能かも!」って言うぐらいだから、
本当に私の料理の腕は酷いんだと思う。



「でも、俺にかかれば料理なんてすぐできるようになるからな!」


笑ってくれる丸井君に、私は安心感を覚える。


クラスのムードメーカーで、よく可愛いと言われる丸井君が今はすごく頼もしそう。


「よろしくね、丸井君!」お、おぅ……と照れたように丸井君は頭をかいて、私は小さく笑った。


「じゃぁ、明日の午前中に俺んち来い。明日は土曜だから、学校も休みだしな!」


「丸井君ち?」


「あぁ。お前の家の近くで、学校に行くまでの道にあるからすぐ分かるだろぃ?」


確かに。


私は電車で通う人とは違い、徒歩通学をしている。


確か丸井って書かれた表札を、朝学校行くときにいつも見てたような……。


「あれって丸井君ちだったんだ!」


丸井君は苦笑しながら言った。


「そうだぜ?気付かなかったのかよ。」


頭を縦にブンブンとふった。


「と・に・か・く。明日来いよー。楽しみに待ってるからよ!」

「うん!」


私は明日を待ちきれない思いになりながら頷いた。





丸井君の家に行く
(どこか楽しみにしてる私)

仁王連載じゃなくて、ブン太連載(笑)

2011.10.21

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ