お試し小説
□chocolate with me
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高校2年の2月、私は決意した。
「お願い、丸井君!お菓子作るの教えて!」
私が教室で丸井君の席の前に立ち、手を合わせて言う。
丸井君は目をパチクリさせた。
「いいけど、なんでだよ?」
私は目をそらす。
でも、そしたら好きな人が視界に入り真っ赤になってしまってうつ向く。
「その、ね。バレンタインデーで、チョコあげようと思って………。」
最後は消え入るように小さい声になってしまった。
丸井君はそんな私とさっきの視線の先を見比べる。
そして意地悪そうに笑って言った。
「わかった。みょうじ、仁王が好きなんだろい?」
゛仁王゛と言う言葉を聞いてしまうと、最近すぐ反応して赤くなってしまう。
今も耳まで真っ赤で、それは図星です、と言っているようなものだった。
「そそそそそそそんなわけないよ!」
「あー、あきらかに動揺してるな。そうか。みょうじは仁王が好きなんだな。」
「ちょ、声大きいよ!」
私は丸井君に言うと、すぐに仁王君を見た。
大丈夫、聞こえてないみたい。
頬を少し膨らませて丸井君を見ると、丸井君は「めんご。」と呟いて顔の前で手を合わせた。
「とにかく、絶賛☆片想い中のみょうじは仁王にバレンタインデーにチョコを渡したいんだな?
で、そのために、天才的な料理やお菓子を作るこの俺に教えてほしいと。そういうことだな?」
゛絶賛☆片想い中゛とかの単語が恥ずかしかったけど、私はブンブンと顔を縦にふる。
すると丸井君はウィンクして言った。
「よし。俺がみょうじが仁王との恋が成就するように、マンツーマンレッスンをしてやる!覚悟しとけよ!」
立ち上がって胸をはって言う丸井君に私は嬉しくて。
笑いながら「ありがとう。」と言った。
丸井君は席につくと、ボソリと耳打ちしてきた。
「で、どこまで料理できるのか?」
私はすぐ目をそらした。
でも、丸井君は私の顔をのぞきこみ、笑いながら言った。
「もしかして…?」
「………うん。全く出来ない。」
「全く出来ないのかよぃ!?」
これは教えがいがありそうだとか言ってるけど、私は本当に料理できない。
典型的な砂糖と塩を間違えるっていうことも、もう経験済み。
ケーキとかクッキーを焼こうとしても、真っ黒けに焦げちゃう。
お母さんだって、「なんでレシピ通りにやってるのに、こんなんになるの?逆に才能かも!」って言うぐらいだから、
本当に私の料理の腕は酷いんだと思う。
「でも、俺にかかれば料理なんてすぐできるようになるからな!」
笑ってくれる丸井君に、私は安心感を覚える。
クラスのムードメーカーで、よく可愛いと言われる丸井君が今はすごく頼もしそう。
「よろしくね、丸井君!」お、おぅ……と照れたように丸井君は頭をかいて、私は小さく笑った。
「じゃぁ、明日の午前中に俺んち来い。明日は土曜だから、学校も休みだしな!」
「丸井君ち?」
「あぁ。お前の家の近くで、学校に行くまでの道にあるからすぐ分かるだろぃ?」
確かに。
私は電車で通う人とは違い、徒歩通学をしている。
確か丸井って書かれた表札を、朝学校行くときにいつも見てたような……。
「あれって丸井君ちだったんだ!」
丸井君は苦笑しながら言った。
「そうだぜ?気付かなかったのかよ。」
頭を縦にブンブンとふった。
「と・に・か・く。明日来いよー。楽しみに待ってるからよ!」
「うん!」
私は明日を待ちきれない思いになりながら頷いた。
丸井君の家に行く
(どこか楽しみにしてる私)
仁王連載じゃなくて、ブン太連載(笑)
2011.10.21