お試し小説

□find a way
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「毎日つまらないのではないか?」

これが全ての始まり。






「みょうじさんまた学年2位だって。頭良いよね。」

「あーあ。でもなんで1位じゃないのかな?」

「だって1位は柳君だもん。仕方ないよ。」

中間テストの順位が発表されて、話題は順位のことで持ちきりになる。




自分の順位にホッとする人とかトップの人の話をする人とか、落胆する人とか。




私は落胆する人。



だっていつも2位。

柳って輩を抜かせない。

1位以外には意味がないのに。






私は唇をかんで、立ち上がり外をブラブラすることにした。









黒ぶちのメガネを直し、私は放課後の校庭をブラブラと歩く。

桜はとうに葉桜となっていて、花を咲かせた面影も残っていなかった。

近くでラケットにボールが当たるインパクト音が聞こえて私は顔を不快にした。

どうして。

どうして私は部活をやっている柳に負けるの?

「……偵察に行ってやる。」

私は小さく呟いて、テニスコートに向かった。





テニスコートでは、柳と真田が試合していた。

そして、それを取り囲む女子!

キャーとか声だして、耳痛い。

少し離れた木の下に立って、その試合を眺めてみた。

いつもは涼しげな柳が、汗を流して必死に試合している。

真田のほうは例の帽子かぶって、静かなることどうのこうのって叫んでて耳痛い。

「空蝉。」

ボールがドロップショットになって相手コートに落ちた。

「へぇ、上手い。そこでドロップショットなんて。」

私は腕組みして呟いたら、




柳と目あっちゃった。




ちょ、こっち向かってくるし。


「えっと、何かな?それに、今試合中じゃないの?」

柳は私の前に立って言った。

「いや。今は丁度タイムだ。で、みょうじ。テニスに詳しいみたいだな。」

「えっ?」

私は驚いてしまう。

だって"あのこと"を知っている人はこの学校にもいるわけなくて。

「ドロップショットなんて知っている人は、普通の人にはそういない。」

こっちを見てるか見てないかよく分からん目でガン見やめてって!

メガネを直しながら私は言い訳を考えて言った。

「「実は漫画を読んで覚えたんだ。」とお前は言うが、前に自分は漫画を読まないと言っていただろう。違うか?」

う。

なんで言ったことが分かるんだ!

「まぁね。ってか予想しないで。あと、私の前に立たないで。他の女の子からの視線痛いから。」

息をとめて、一気に言った。

「いや、俺の勝手な予想だ。ちなみに当たる確率は85.7%だった。あと、俺が好きでみょうじの前にいるだけだ。他の人の目を気にする理由がどこにある?」

なにも言えない。

相手のほうが一枚上手か。

「なんで部活やってるのに、学年1位なわけ…。」

「なんのことだ?」

「中間テスト!」

「あぁ。授業でやったことをその日のうちに復習して完璧にする。それだけだ。」

いるよね、こういう天才頭。

こんなふうにサラッと言って。

苦労して勉強してるほうの気持ちも考えろし。

「だが、みょうじも頑張っているのだろう。いいじゃないか、2位で。」

柳はクスリと笑った。



「やだ。常に上じゃないと。」

そう言うと、柳は顔を曇らせた。

「つまらなくないのか?」

「えっ?」

「いや、なんでもない。ところで、今テニス部はマネージャーを募集している。やっみてはどうだ?」

唐突に言われたから驚いて目をパチクリさせる。

「え…。無理に決まって……。」

でも、甘美な誘い。

いや、テニスには関わらないと決めている。

「あ、すまない。弦一郎を随分待たせてしまった。怒っているだろう。この件に関してはまた考えてくれ。では、な。」

柳はそう言って軽く会釈をすると、コートの中に走って行ってしまった。

言いたいことだけ言って…、都合のいい奴。

「マネージャー…か。」

私はオレンジ色に染まった空を見て小さく呟いた。





胸の懐かしさ
(マネージャーやったことはないんだけどね)

この中では定期考査は年に5回ある設定です。
中間2回、期末3回です。

2011.11.15

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