お試し小説

□chain of poison
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昔から好きだった。

謙也とは幼馴染みで、面白い消ゴムが大好きで、何事も速かった。

ずっと一緒にいたし、手だって気兼ねなく繋げた。

だから私が一番長く一緒にいた男の子なわけで。

好きになるのは当然のことだった。

「ごめんな。親友としか見れないんや。」

告白をして、そう言われたとき、目の前が真っ暗になったような気がした。

「あ。別に大丈夫だよ。これからも友達として話しかけてね。」

そう言うと謙也はすごく泣きそうな顔をして、「ごめんな。本当にごめん。」と謝ってきて、謙也は本当に優しいって思った。

でも、やっぱり悲しくて悲しくて。

私は謙也と別れた後、教室の机に突っ伏して泣いていた。

「ぅ……。」

嗚咽が止まらなくて、誰もいない教室にその声だけが響いた。

少し期待していた自分もどこかいた。

これだけ近くにいたんだし、彼も私のことを思っていてくれているんじゃないか…って。

「みょうじ……?」

不意に声をかけられて顔をあげると、謙也の友達の白石君がいた。

色素の薄い髪が目につく。

クラスで謙也と同じぐらい人気で、どちらかというと派手系な人。

「白…石君?」

多分顔はグシャグシャなんだと思う。

けれどそれよりも、話したこともないような人に声をかけられたことに驚いていて、顔のことは全然気にならなかった。

「どうしたん?」

優しい口調で問われて、また泣きそうになってしまう。

けれどまた泣いてしまったら心配をかけるだけだしグッとこらえる。

「謙也にね、ふられちゃった。アハハ。」

まるでおかしな夢を見た様に笑って告げた。

白石君も笑えばそれでいいかなって思ったから。

だけど白石君は心配そうな顔をしたままで。

「みょうじ…。無理せんでもええんやで?」

優しくて低いトーンで言われて、そんなの反則だと思う。

だって、縋っちゃいたくなっちゃうじゃん。

その優しさに溺れたくなっちゃうよ。

「ごめんね…。本当に大丈夫だから。」

溺れてしまわない様に、長い長い距離をとろう。

立ち上がってカバンを持ち白石君にじゃあね、と言うように手をふる。

「絶対大丈夫なわけあらへんやろ。」

でも白石君は私を逃げさせてくれないみたいで、かたく手をつかまれた。

口調の優しさとは裏腹の手の強さに何処か違和感を感じる。

「今のみょうじは…、歩いちゃあかん顔しとる。」

「涙でグシャグシャってこと?」

あんまり話さないのによく心配してくれる。

「違う。確かに顔もグシャグシャかもしれへんけど、それ以上にめちゃ傷付いとる顔してるやろ。」

その言葉で、我慢していた涙が溢れる。

こんなに心配してくれることが嬉しくて嬉しくて。

「ありがと。白石君…。」

「泣きたいときは泣くのがいいんやで。」

コクリと頷いた。

そのままうつ向いて泣いていると、白石君に優しく抱き締められた。

白石君の体はあったかくて安心する。

目を閉じて、泣いて泣いて。







そのままだいぶたってしまっていた。

涙がとまったのに10分もかかったみたい。

「ごめんね。時間…。それに制服も……。」

涙で濡らしてしまった白石君の制服をそっとなぞって呟く。

白石君はそれを否定するように目を閉じて首をふった。

「ありがと。」

ただ感謝の気持ちでいっぱいで、私はまたありがとうを繰り返す。

白石君は「そないならよかった。」と微笑んでくれた。

「あーあ。でも本当に悲しい。ふられちゃった。」

また話を掘り返したみたいだけど、白石君のおかげで涙は出ない。

「そうやろな…。」

白石君もうんうんと頷いた。

「謙也が好きってこと忘れたいとか思わへんの?」

ふと白石君が呟いた。

私はびっくりしちゃって、でも冗談なのかな?って思って「まぁ…そうだね。」って言
う。

別に忘れたいのは本当。

ずっとつらい思いはしたくないから。

「楽になりたいの。」

うつ向く。

最悪なのかな?

でも誰だってつらい思いはしたくないから。

「みょうじ…。」

上から声がふってきて、見上げると白石君のきれいな顔がすぐ近く。

「?」

「なら俺が楽にさせたるで。」

瞬きする間もなく、白石君の唇は私に重ねらた。






関西弁、努力していこうと思います。
2011.12.16

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