「浦飯くん! やっと見つけたわよ!」
まだ慣れない校舎を探し回りながら、ようやく辿り着いた屋上の給水塔、その下に彼、浦飯幽助はいた。
「よぉ!」
「よぉ、じゃないわよ! またこんなところでサボって…」
「うっせーな。んな小姑みてぇな事言ってっと男逃げるぜ」
「なっ、失礼ね! 何言ってっ……ゲホッ、ゲホっ」
……煙い…?
勢いよく吸い込んだ煙が自ら吸い込まれるように喉の奥を刺激し、気が付いたらまとわりつくように呼吸を妨げていた。冗談じゃなく苦しい。
「ん? あぁ、わりぃわりぃ。センセー、煙草吸わねぇの?」
「吸いません!」
「駄洒落にしてはセンスねぇな」
「謝ってるんじゃなーい!!」
「わーってるよ」
「もう!」
ニタニタと全く動揺も反省もない浦飯くん。いくら新任教師とはいえ、年上を敬うことくらい出来ないわけ?!
学校一のワルだか不良だか知らないけど……
「とにかく、煙草禁止ー!」
「膨れんなよ。可愛い顔が台無しだぜ、瑠璃チャン♪」
……ダメだ、10個も年下の生徒相手に完全に遊ばれてる…。
++ せんせい ++
何とか煙草は没収して吸わないって約束を取り付けた3日前。それなのに…
「二度とこんなもの吸わないって言ったじゃない!!」
「おう。だからさ、銘柄変えといたぜ」
もう……どう言ったら良いの?
外国人?宇宙人?言葉通じないんですけど!!
今日もキリキリ痛む胃を押さえながら職員室に戻れば、休憩時間で戻っている先生が多くいた。
「それにしても、あの浦飯がこんなに学校に来るなんて……先生、どんな手を使ったんです?」
冗談のつもりかしら?
それにしてはタチが悪い。
下卑た笑いに寒気がするわ。
ただでさえ胃が痛いのに、頭まで痛くなりそう。
「まぁ、そうなんですね! 浦飯くんに熱意が伝わってくれているなら嬉しいんですけど」
「ほう…熱意ですか…」
無視よ無視。
このタイプは相手にしても、こっちが不快になるだけだわ。
そんなことより、浦飯くんよ。悪い子じゃないし、どうにかしてあげたいけど、そもそも何であんなにグレちゃってるのかしら……。