□*お母さん、お父さん
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十年前、私の母はある日、帰ってこなくなった。

父に聞いても父は何も言ってくれなかった。
 母の居場所を私が知ったのは、母が帰ってこなくなった二ヶ月後だった。


 母の体は土の中に埋められていた。
 私の体も土の中に埋められた。
 父の手によって

私の体が土の中に埋められた時、母は泣きながら私に抱き付いた。
 無言で・・・・

母が泣いているのを見て私は父が許せなくなった。

私の手で父の体も土の中に・・・・だけど、

父の体を土の中に入れたのは母だった。

「おとうさんを憎まないで・・・・」

 そう言いながら・・・

 当時の私には意味がわからなかった。
父の体を土に埋めて、父と共に地の底へ落ちながらも
 「憎まないで・・・」と言った母の気持ちが・・・


 けど、今はわかる

母は、父を恨んでいなかった。

私の父は、私が七歳の頃に事故に遭い、精神的な病にかかってしまった

『自分以外の人間は全て敵・・・敵は倒す』

父の心の中はそればっかだった。

母は父に殴られ続けながらも、父がいつか元に戻ると信じ続けた。

けれど、母の思いは父に届かなく、父は私と母を土の中へ埋めた。

母が亡くなったとき、言えにきていたのは母の友人で
私の家に異変を感じ、調べるために毎日きていたのだ。

母はこれ以上父に人を土の中に埋めて欲しくなくて父と共に地の底に落ちていった。
・・・・母は土の中に埋められても父を愛していた・・・・

母と父の二人は地の底

私は一人天にいる。
ずっと一人で・・・・

でも、もうすぐ・・・もうすぐで私は、私じゃなくなる・・・
私は別の私になる。今までのことを全て、全て忘れて、違う父と母に育てでもらう。

もう・・・・会えない

もう二度とあの二人に会えないのか・・・・

 こんな悲しいことはない

大好きな二人にもう会えないんなんて・・・

 こんな残酷なことはない・・・

いやだ・・いやだよ!!もう二度と会えないんなんていやだよ!!
もう一度三人で仲良く暮らしたいよ!!

 お母さん、お父さん

どうして、どうして私は、私はあなたたちと一緒に暮らせないの!?



・・・・ある女の人が私にこう言った・・・・

「いつかまた会えると信じていれば、また、お母さんとお父さんに会えるよ。
また、三人で仲良く暮らせるよ。だからもう泣かないで・・・ね」



彼女は私の瞳をまっすぐ見つめ、笑顔で言った。
誰もが言いそうな言葉。
だけど、私は彼女の言葉を信じることにした。
今、私の目の前にある扉、前は開けるのがものすごく嫌だった。

 けど、今は・・・・・

「今度会える時は、三人仲良く暮らそうね。お母さん、お父さん。」
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