捧げ物

□実験という名の
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「んっ………?」


まだ覚醒仕切れてない意識の中、目を薄く開くといつも見てる天井はなかった

ここは何処なんだと一先ず立ち上がろうとしたが、それはできなかった。ベッドに寝ていたわけではなくイスに座っていたようで、手は後ろでロープで縛られ、脚も同様にイスの脚にガッシリと縛られている

当たり前だが、自分でやったわけではない。こんな趣味はまったくない。誰かが自分を連れ去ったのだろうか。とにかくここから脱出しなければ


「……これはどうだろうか」

「お、それはいいかもしれないね」


ロープで縛られた手を外そうとしていると、後ろから聞き慣れたら声が聞こえた。何となく頭の何処かであいつらなんじゃないかと思っていた自分もいた、いや、あいつら以外にいるはずがない。こんな馬鹿なことをするのは
首を少し横にし、横目で後ろにいる人物を確認する。予想通り、やはりそこにはあの二人がいた


「これとかいいんじゃないか?」

「いやいや、それを飲ませたらすべての臓器が破裂してしまう。片付けがめんどうだからまた今度にしよう」


俺にいつもめんどくさい任務を押し付ける支部長、ヨハン・シックザール。変な薬やら機械やら作る変人博士、ペイラー・榊
というか、今恐ろしい会話を聞いたのだが、スルーするべきか。いや、スルーなどできるはずがない
すべての臓器が破裂?俺達がいつ死んでもおかしくない境地に立たされてるなか、あんたらそんなものを作ってたのか。そんな時間があるならアラガミを効率良く倒す研究でもしてろよ
しかもそれを飲まそうとしたあんたらは何を考えてるんだ。脳細胞死んでるのか、なるほどそうか


ここにいては何をされるかわかったもんじゃない。生きて帰れる可能性の方が低いだろう
こんなやつらに殺られるならアラガミに喰われた方がマシだ。ここから逃げようと先程より強く想い、きつく縛られてるロープをほどく作業再び始めた

手首がヒリヒリと痛むが、きつく縛られたロープは徐々に緩くなっている。手錠や鎖ではどうもできなかったのでロープで助かった


「(っ、やっとほどけた…!)」


手首を縛っていたロープがほどけ、床に小さな音をたて落ちた
後ろにバレていないか確認するが、後ろの二人は俺に何を飲まそうか品選びに夢中だ。支部長、その目玉がいっぱいついてる緑のスライムみたいなのが入ってる注射器置いてください。うねうね動いてますよそれ。やばいやつですよそれ

手が自由になり、イスの脚に縛られてる脚も自由にするために身を屈み脚に縛りついてるロープに触れた


「おはようリンドウ君」


後ろで、悪魔の声が聞こえた気がした

嫌な汗が流れる。多分、今の自分の顔は死人のように白いに違いない

そうだ、これは夢だ。そうに違いない
日々の疲れからなのか、自分は悪夢を見てしまっているのだろう。うん、絶対にそうだ、つかそうだろ、そうだと誰か言ってくれ

現実逃避しても今の現実がなくなるわけでもなく、肩に重みを感じ嫌でも現実に引き戻された


「予想よりも19600秒早い目覚めだ。気分はどうだい?」

「あー…最悪ですね、とても」

「まだ疲れが抜けていないのか」

「そうみたいだね」


自分たちのせいだとわかってるくせにわざとらしく嘘を吐く二人にいらつきを覚えた。お前らのせいだと口にしたかったが、こいつらに何言ってもムダだと思い、ぐっと押さえた


「それよりも、ここから出していただけますか?仕事が残ってるんで」

「それはできないな、リンドウ君」

「は?」

「君には私たちの暇つb…実験に付き合ってもらいたいんだ」

「……は?」


この二人がいる、変な薬品がある、それだけで大体何をされるかをわかっていた。どうやってここから脱出できるかを考えると同時に、こいつらをアラガミで群がる場所に投げ棄てていきたいなと思った


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