drrr!!

□rain
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排気ガス混じりの雨の匂いは憂鬱になる。静雄はビニール傘の下で静かに溜息をついた。踏みしめた水溜まりから跳ねた水がサングラスに点々とつく。今日の池袋は終日雨。暗い空。

雨の日は何時もこうだ。憂鬱だ。思い出したくない記憶が蘇る。あの時計を無くしたのも、近所の猫が居なくなったのも、彼女が居なくなったのも、雨の日だった。嫌な匂い。雨と、アスファルトと、血の匂いがする。空が赤い。あの日の彼女みたいだ。

静雄が落とした傘がごとりと落ちた。雨雲に手を伸ばせば忘れられる気がした。濡れて冷たくなる指だけが、確かに生きることを望んでいるかのようだった。



視界はまだ赤い

2011/08/22

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