仁王誕
一昨日、委員会で会った柳生くんにポケットに入ってた葡萄のキャンディを投げつけたら「本当に貴方は、何を考えているのかさっぱり読めません」って言われた。昨日は購買で会ったブン太に教室戻ったら腕相撲勝負しようって言ったら「お前ってマジ意味わかんねえ」って言われた。そんで今日は仁王くんか。そんなに私って思考が読めない電波な子?そもそもそれってさ、私よりもこの目の前にいるペテン師に言うべきじゃないかな。
「…本当にようわからん女じゃのう」
「なにが?」
「なにって、髪の毛」
仁王くんはわりかし淡白な人間だから表情の起伏が薄いけど、今日は余程驚いたのか一瞬だけ目を丸くした。一瞬だけ。でもまたすぐに目を細めて、何時もどおりの喰えない意地悪な笑顔に戻った。
「俺とお揃いじゃな」
教室の窓に映っているのは仁王くんの銀髪と私の銀髪。派手だなあなんてぼんやり思った。きらきらしてますなあ。でも私の髪の毛ってウェーブかかってるからシルエットは全然違う。うーん。
「あのね、私の好きな男の子がおんなじ色の髪の毛なんだ」
「ほお」
「でもシルエットが全然違うの、やっぱ縮毛矯正かけて髪短くしてゴムで纏めないと」
「その誰かさんと一緒の髪型にしたいんか」
「うん」
とっても分かりやすいように言ってみた。柳生くんもブン太も仁王くんも、これなら分かるでしょ、仁王くんが大好きでーす!髪型一緒にしちゃったくらい大好きでーす!って。仁王くんは相変わらずにやにやしてる。私の言ってる意味分かってて、尚且つどんなふうに切り返してやろうかって悪巧みしてる顔。
「そんで?その誰かさんの反応は良かったんか?」
「すごくにやにやしてます」
「そりゃあ自分の好きな女の子が自分と髪の毛お揃いにしてきたら、ご満悦にもなるじゃろ」
あ、珍しく分かりやすい言葉。さっき喰えない男の子とか心の中でちらっとでも思ったのが通じたのかな。絶対意地悪なこと返してくると思ったのになあ。まあタイミング的にはやっぱり喰えない男の子だよね。だってこんなタイミングでそれ言われたらさ、
「期待しちゃうよ」
「こっちのセリフぜよ」
「してもいいよ」
「こちらこそ」
仁王くんの細い指が私の銀髪の上を通り過ぎてって、お返しに私は仁王くんのゴムをほどいてみた。ばさっと音を立てて、色気三割増しの仁王くんの出来上がりー。タッタラー。
あ、そういえば忘れてた。
「ねえ仁王くん」
「なん?」
「お誕生日おめでとうございまーす」
本日二度目の仁王くんのびっくり顔。そりゃあそうだよね、仁王くん私に誕生日教えてないもん。この情報は柳くんから買い取ったんです。金額は今貴方が想像してる額に0二つくっつけたくらいです。
「やっぱお前さん、喰えないヤツじゃ」
でも駆け引きの上手い女は嫌いじゃなか。って仁王くんは言ってくれたけどね、だから私は普通の女だってば。だって、プレゼントは私でーすなんてベタな言葉を仁王くんに言おうと思ってたんだよ。私と駆け引きをしたいなら、まずは貴方が教えてよ、恋の駆け引きを。なんてね。
トロンプルイユの窓
2011/12/04
NIOH Happybirthday!