太陽シリーズ


□first love3
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それから数日間、陽介はあの夢を見続けていた。
お蔭で太一よりも早く起きてしまい、授業中に眠くなってしまう有様。
コクン、コクン、と首が揺れると後ろからポンポン、と肩を叩かれて起こされる。
見ると太一が口パクで「大丈夫か?」と聞いてくれる。

「うん、大丈夫。ちょっと眠いだけだよ」

そう書いた紙を投げると太一は「気をつけろよ」と返事を書いて紙を渡した。
そんな兄の心配に顔が赤くなる。だがこれは兄として心配してくれるのであって、決して男としての想いじゃない。
こんな時にどうして自分達は兄弟として生まれてきたのだろうかと運命に嘆いてしまう。

「陽介、本当に平気か?最近僕よりも早く起きるし…もしかして眠れないのか?」

自分の部屋に戻り着替えると太一が心配そうな顔をして聞いてくる。
陽介はニコ、と微笑むと首をゆっくりと振った。

「平気だって。心配症だな太一は」

まさかお前とエッチしてる夢を見て興奮してるんです、なんて言えない。

「はぐらかすなよ。僕は本当にお前を心配してるんだ」

ズイッ、と身を乗り出されると距離が一気に縮まる。
太一の吐息が耳にかかるとビクッ、と体が震えた。

「体が熱いぞ。熱でもあるんじゃないか?」

コツン、と額同士がくっつく。
目の前には目を閉じている太一の顔。このまま唇が重なってしまうんじゃないかと思う程。
ゆっくりと太一が目を開けると更に顔が熱くなった。

「少し熱いな。今日は早く寝た方がいいな」

「平気だってば……」

「お前はそう言って無茶ばかりする。今日は早く寝るんだ。いいな?」

「でも――」

「陽介」

叱るような低い声。コクン、と頷くと太一はフ、と微笑み頭を撫でてくれた。

「良い子だ。」

「なんか……犬みたい」

「あはは、そうだな」

「だったら僕は猫だな」と言った太一は陽介の手を引くと風呂場まで連れて行った。
その日は夕飯を食べると早くベッドに潜った。
太一は優しい。誰にでも優しい。もしも彼女とかができたらあの優しい声も気遣いも全て相手に奪われてしまうのだろうか。
シてる時もあんな色っぽい声で名前を呼ぶのだろうか。
そんなことを考えていると意識を手放した。

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