加藤元浩作品
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とある国際空港の、ロビー。
「・・・電話なんて、してあげない」
「・・・」
「メールだって、手紙だって、送ってなんかやらない」
「・・・」
少年は、さっきから続いている少女の言葉を、俯きながら聞いている。
黙った、ままで。
黙ることで、少女の言葉を受け流そうとするように。
「アメリカなんて遠いし。行こうと思っても行けないし」
やがて、少女の口調がだんだんと悲しそうなものに変わってきた。
「・・・だから」
だから―――、行かないでよ。
そう言おうとして、少女は口を閉じた。
(今のこいつには、こんな言葉なんて鎖になるだけ、か―――)
俯いたままの少年の瞳には―――静かに、だけれど確かに、ゆるぎない誓いの色が浮かんでいた。
それをかすかに見た少女は、少しだけ目に涙を浮かべて、少年に背中を向け、空港を去った。
ただひとり、そこに残された少年は、少女が自分の鞄の上に何かを置いていったことに気付く。
俯かせていた顔を上げ、それを見る。
それは―――、一枚の写真。
在りし日の自分と、その横で幸せそうな顔をして写っている少女―――水原可奈。
永遠に一緒だと、願っていた日々の中の、一枚。
少年―――燈馬想は、そんな昔の、今では叶うことのない日々を思い出し―――。
目標への誓いを込めた瞳を、涙で濡らせた。
(ただふたり、笑いあっていた毎日)
(もうあの頃には戻れませんか?)
・・・→