加藤元浩作品
□泣かずにはいられない
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泣かずにはいられない
あたしは今日、仕事の話という名目で森羅博物館に来た。実際には、それだけじゃないかもしれない。
だって話が終わった今も、あたしなんか無視してパッパと博物館館長としての仕事をしている森羅の背中を、もう用もないのに見続けているんだから。
あたしは、森羅に惹かれていた。多分、出逢ったときからもうすでに。その不思議な魅力に、囚われ続けている―――。
なんて、もうフラれたんだから関係ないか、とひとりで首をすくめた。
そう。あたしは森羅にフラれている。といっても、直接的にフラれたんじゃない。告白すらしてもいない。なのになぜ、そう言えるかっていうと―――。森羅が七瀬を見る瞳で、もうこの想いは叶わないって悟った。
でも、もう一度。もう一度だけ、聞いてみたくなった。
「ねー森羅」
あたしと七瀬、
どっちが好き?
「七瀬さん」
即答される。分かっていた。けど、泣かずにはいられなかった。
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