加藤元浩作品

□あなたがいるから
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*「賢者の遺産」のあとです。

あなたがいるから

古びれた洋館の前に、1人の少年が、少女の頭がどこか異常はないかと視ていた。
「水原さん。本当に頭大丈夫ですか?」
「だァ――かァ――らァ――!!大丈夫だって言ってんじゃん!!それより、ホントだって!!1927年に、めちゃめちゃ燈馬君に似てる『塔場さん』ていう人が、難事件を解決したの!!信じてよう!!」

少年の名は燈馬想、少女の名は水原可奈。そして、燈馬がどうして、そんなことをしているのかというと、可奈が誤って過去へ行ってしまい、戻ってきたときになぜか気絶していて、そのことを燈馬に話すと、「転んでどっか打ったんじゃないですか?表の明るいトコ行きましょう。」と言われ、現在に至るというワケだ。

「ねェ、ほんとだってば!!」
「ハイハイ。」
「そんで、こっち帰ってくるとき塔場さんに『よかったら残ってもらえませんか?』って言われたの!!」
信じさせようとする可奈に、適当に相槌を打っていた燈馬だが、可奈の言葉を聞いた瞬間、耳がピクッと動いた。

「・・・それで、貴女はどう答えたんですか?」
「ん?燈馬君やっと信じてくれたの?」
燈馬がどうして可奈にそんな質問をした理由にまったく気付かず、可奈は明るい表情で聞き返した。
「ハイ。やっぱり気になるんで。」
「??まあそりゃ『ごめん』て言って帰ってきたよ。」
可奈の答えに、燈馬は1番聞きたかった質問を聞こえるか聞こえないかぐらいの小さい声で言った。

「・・・そのとき貴女は、少しでもその「塔場さん」のところに残りたい、と思いましたか・・・?」
その質問をした燈馬自身が、恥ずかしくなって下を向いた。そんな燈馬に、可奈はまた聞き返した。
「と、燈馬君もしかして、塔場さんに妬いてる・・・?」
可奈にそう言われたとたん、燈馬の顔は火のように赤くなった。
「ね、ねえ・・・」
「・・・そ、そんなんじゃないです。ただ、ちょっと気になっただけで・・・。」
「へェ―――。」

赤くなっている燈馬に可奈は曖昧な返事をしながら、クスッと笑って、
「・・・塔場さんとお別れするのは悲しいなあ、と思ったけど、『残りたい』なんて思わなかったよ。現在(ココ)には、燈馬くんがいるから・・・ねっ!!」
「えっ、水原さん最後なんて言ったんです、か、・・・わぁ!!」

燈馬が言い終わらないうちに、可奈の手が燈馬の背中をバシっと叩いた。
「何すんですか!!」
「いいじゃん別に。細かいコトは気にすんなって。」
「はぁ・・・。」

巧くはぐらかされた気がする燈馬だったが、可奈のいたずらっぽい笑顔を見て、まあいいか、という気持ちになったのであった。



終わったー。これ昔書いたやつちょっと直しただけですけどね。。
下に追記書きましたー。興味ある方は見てください。




[追記]
「はァ―――、なんだかお腹すいちゃった!!ね、燈馬君もそう思わない??」

「ハイ、そういえばさっきからそんな気もしますね。」

「燈馬君、家帰ってもロクなモン食べないンでしょ??だったら、うち寄ってきなよ。ゴハン食べさせてあげる。」

「ありがとうございます。あ、それと、さっきの話なんですけど、もし僕も塔場さんの立場だったら貴女に残ってほしいと言うでしょうね。」

「へ!?な、何で!?」

「だって、いたら肉体労働とか全部やってくれそうで、便利じゃないですか。」

「ああ、そう・・・かい!!!!!!!!」
夕暮れの空に、可奈の鉄拳の音だけが、鈍く響いたのであった・・・。

8月12日あなたがいるから・完

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