混ざり合うもの

□無理矢理ポッキーゲーム
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世界一初恋
高律





会社の廊下をフラフラと歩いていると


「小野寺さん…ですよね?」


数人の女性が話しかけてきた


「そうですが…」


「ちょっと仕事の要件があって…今いいですか?」


「えっと……はい」


俺が頷くと女性たちは


「じゃあちょっとついて来てください」


嬉しそうに言いうと同じフロアのサファイア編集部へと俺を連れ込んだ


「…ここ座ってくれます?」


編集部へ着くと笑顔でそう言われたので何の疑いもなく


「座るだけでいいんですか?」


「はい 座って待っててください」


俺は促されるまま用意された椅子へ腰を下ろした
すると


「んだよ 呼び出して」


不意に不満げな声が聞こえその方向に顔を向けると


「高野さん」


どうやら俺と同じ呼び出された様だ


編集部の人は高野さんの背中を押して俺の前まで連れて来ると


「はい 小野寺くんこれ咥えて」


差し出されたのはよく店で見かけるポッキー


「なんでですか?」


「いーから ね?ほら」


俺の質問を無視して一方的に口に突っ込まれいつの間にか横に待機していた編集部の人 二人に座っていた椅子へと身動き出来ない様に抑えつけられた


「…」


「……」


顔を上げると俺を見下ろす高野さんと目が合った


さすがにここまでくればいくら鈍感な俺だってわかる
……わかるんだけど
逃げたいんだけど……
自由を失った体ではどうしようもなくて


「それじゃあ高野さん お願いします」


「は?」


「は?って何ですか 今日はポッキーの日ですよ?ほら小野寺君が咥えてるんで、どうぞ!」


「(どうぞの意味がわからない!)」


俺は首を左右に振って全力で拒否を示す…が高野さんは両頬を包んで顔を固定させ


「いただきます」


軽く舌舐めずりをしてから反対側の先っぽに口を近付ける
徐々に近付ける高野さんに「きゃー」だの「色っぽい」だの周りは囃し立てる


高野さんがポッキーを咥え様と口を開けた瞬間


もぐもぐ


「…」


もぐもぐ


「……」


咄嗟に咥えていたポッキーを食べてしまった


「…」


シンと静かになった編集部


「……おい」


その沈黙を破ったのは高野さんでその声には少しだけ怒気が含まれている気がする


「……ご、ご馳走様…でした」


俺は内心「やってしまった!」と焦り目の前の高野さんを引き攣った顔で見ながら小さくそう言った


「…そんなに俺が嫌か」


「違っ!」


片目を細めて言う高野さんに否定の言葉を述べた瞬間高野さんがニヤリと笑った


「ならお仕置きを兼ねて…今夜はたっぷりと可愛がってやるよ」


「っ!!」


高野さんは俺の頬から手を離す際にこんな台詞を残しさっさと帰っていってしまった


「…」


拘束を解かれ顔を真っ青にさせ固まる俺を他所に暫くサファイア編集部は大騒ぎ


「今夜頑張ってね」


「明日楽しみにしてるから!」


訳のわからない激励と編集部の人の輝く顔を見て段々と顔は熱を持つ


その後箱に残っているポッキー(1本しか減っていない)を貰って熱い視線と歓声に更に顔を赤くさせた


END

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