*Short

□特別な日には特別なことが起こる
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六道「体調はどうですか?」





僕が問いかけても返事は返ってこない
真っ白な彼女は答えるどころか、目も開けてくれないのだ


ここは病室、彼女は病人、
半年以上眠り続けてる僕の眠り姫


僕は返事をしてくれないのは承知で彼女にいつも通り話しかける





六道「知っていますか?今日は僕の誕生日なんですよ」

なまえ『……』

六道「ケーキは…そうですね、チョコレートだったら嬉しいですね』





僕は彼女の髪を優しく撫でながら話をする

一向に目を覚ます気配が無い彼女、
医者に「もう無理かもしれない」と言われても、
僕は絶対に諦めません


例え、目の前の彼女がこのままずっと眠り続けようとも




六道「プレゼントは特に欲しいものがあるという訳ではないです。ですが…」





僕は髪を撫でていた手を、彼女の手へと移した
そしてぎゅっと握り締める

生気を感じられない力の抜けきった真っ白な手、
そんな手を僕は大事に握り締めた





六道「今僕が一番欲しいプレゼントは貴方が目を覚ましてくれる事です」

なまえ『……』

六道「なまえ、お願いです。目を覚まして下さい…!」





彼女は先程と変わらず死んだ様に眠っていた
本当に死んでるのでは無いか、そんな不安と戦いながら、
届いてる筈の無い僕の言葉を彼女に向けて紡ぐ





六道「貴方が意識不明になってから早半年、貴方が居ない生活はぽっかり穴が開いたような感じです」

なまえ『……』

六道「神様でも何でも良い。どうか、どうかなまえを目を覚ましてあげてください…!」





それでも耳に入ってくるのはサラサラと風が木々を駆け抜ける音と、
病室の外で看護婦さんが歩いているスリッパの音だけだった


世の中、そんなに都合良くいかないものですね





六道「今日はもう帰りますね、明日もまた来ます」





僕は荷物を持ち病室を出ようとした


静まり返った病室内、
扉に手をかけようとしたその時

僕は奇跡というものを感じました





なまえ『むく……ろ?

六道「っ!?」





まさか、
まさか今の声は…!

風が草木を撫でる音じゃない、
病室の外で看護婦さんが話している声でも無い、
僕の声とも違う

じゃあ、今の声は…!!


僕はベットへ駆け寄り、
またなまえの手を強く握った





六道「今…!」





僕の目の前には、死んだように眠っている彼女ではなく、
うっすらと目を開けている彼女が居た


ああ…なまえの目、半年振りです
誕生日の奇跡、起こるものなんですね





六道「なまえ、目を覚ましたんですね!ちょっと待ってて下さい、今医者を…!!」

なまえ『む…くろ…』

六道「っ…はい、何ですか?」





僕は涙腺が緩みながらも、目を合わせて返事をする

本当に彼女が目を覚ました
彼女が僕の名前を呼んでいる…


神という存在を信じていたわけではないけど、
この時だけは強くこう思いました





なまえ『たん…じょーび……おめ…でとう』





最高の誕生日プレゼント、ありがとうございます





















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