日吉君の隣の席の彼女
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さて、“アレ”の恐怖からか、全員が死に物狂いで基礎練習をこなしたため、予定より早く終わった。その分、休憩時間が長くなった。
「ハッ!この感覚は……」
「どうしたんだ、侑士?」
「藤子ちゃんが校門に来とる!」
眼鏡が鼻息を荒くして言った。だが、テニスコートから校門は見えない。
「なんでわかるんだよ?」
「俺のラブセンサーが反応しとるんや!」
ラブセンサーって……あ、駄目だ。完全にアウトな部分が反応している。もう人として最低だ。
「今すぐ、迎えに行くで!」
「ゆ、侑士!?」
眼鏡が校門まで走っていく。その眼鏡を向日先輩が追いかける。
「宍戸さん、俺も行きたいです」
「しょうがねぇな。俺もついていってやるよ」
「俺も行くC!」
興味本位で行く鳳・宍戸先輩・芥川先輩。宍戸先輩はもう少し素直になればいい。
「ねぇ、おもしろそうだから俺たちも行かない?」
「幸村がそう言うなら俺も行くとしよう」
「別に老け顔には聞いてないよ。目障りだから視界に入らないで。俺の名前も呼ばないで」
立海のメンバーも興味本位で行く。
「フッ……ついてこい、樺地」
「ウス」
アホベも樺地を従えて行くらしい。アホベが不敵な笑みを溢している。とても気持ち悪い。
俺も興味本位で行くことにした。走っていくのも面倒なので歩いて。
俺が行ったとき、服部は眼鏡にドロップキックを決めていた。
服部の強さを見た立海の反応はというと……
「あの技、よくテレビで見るぜぃ」
「たまらん飛び蹴りだな」
「打点、着地時の受身も素晴らしいものです」
「俺も真田にやってみたいな」
「あ、忍足が立ち上がってまた襲いかかってやがる」
「今度は体落とし。柔道もできるとは凄いのぉ」
「それより、あの人……めちゃくちゃ美人じゃないッスか!」
誰もが感嘆の声をあげていた。しかし一人、黙々と服部の様子を見る人がいた。
「藤子、パイルドライバー!!」
「はい!」
服部は向日先輩のリクエスト、パイルドライバーを見事に決めた。そして、忍足を倒したことがわかり、息をついた。
そんな彼女の傍にいち早く近寄った人が………
「見事なパイルドライバーだったな」
「あ……あのときの……」
柳さんだった。服部の頬が少し赤くなっているところから、彼が服部の思い人であることは明らかだった。
「よぉ、藤子。来るのが遅かったな。来ないかと思ったぜ」
なんでアホベは空気を読まないんだろう。あの人からテニスと財力を取ったら何も残らない気がする。