日吉君の隣の席の彼女
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そんなアホベを無視して、2人は話を続けていた。
「見てたんですか?」
「ま、来なかったら俺様が迎えを寄越していたがな」
「最初のラリアットから最後のパイルドライバーまで、実に素晴らしかった」
「どうせ、お前のことだ。寝癖が直らなくて遅れたんだろ?」
「全部見られていたなんて……恥ずかしいです……」
「別に寝癖なんて気にすんな。お前の見た目を好きになったわけじゃねぇんだ」
「その恥ずかしがる姿も……可愛いな」
「俺様はお前の気の強いところ。誰にも靡かないところに惚れたんだ」
「そ、そんな冗談、やめてください!」
「他にも料理が上手なところも、格闘好きなところも……」
「全部、本当のことだ。冗談なんかじゃない」
「お前の全てに俺様は惚れている」
……アホベが邪魔だ。しかもアホベと服部のセリフだけ抜粋してもなんとなく話が繋がるのに腹が立つ。そしてとても読み辛い。
「蓮二、知り合い?」
タイミングを見て、幸村さんが柳さんに話しかけた。アホベは樺地が回収した。
「あぁ。ボクシングを見に行った日に、ガラの悪い男達に絡まれているのを助けたんだ」
「へぇ……ねぇ、君の名前教えてくれない?」
「そういえば、俺もまだ聞いてなかった」
「服部藤子です」
「俺は幸村精市。立海テニス部の部長をやっている」
「柳蓮二だ、よろしく……それより精市、そろそろ休憩時間が終わるぞ」
「あ、本当だ。じゃあコートに行こうか」
ちなみに、3人が話をしている間、皆が何をしていたかというと……。
向日先輩、宍戸先輩、鳳は眼鏡の生存確認をしていた。
「あれだけ喰らってるのに、侑士生きてるぜ」
「普通、死ぬけどな」
「死ねばいいんですけどね」;
芥川先輩は丸井さんを見てはしゃいでいた。
「丸井君!あとで一緒に試合しよ!」
「仕方ねぇな。それより、お菓子持ってねぇ?」
柳生さん、切原、仁王さん、ジャックォウさんは服部のことを話していた。
「とても美しい方ですねぇ」
「俺、アタックしてみようかな〜」
「やめときんしゃい、赤也。フられるのがオチじゃき」
「そんなのわかんないッスよ。ジャッカル先輩だったら絶対フられると思いますけど」
「そうじゃな」
「そうですね」
「……お前ら、酷すぎだろ……」
真田さんは幸村さんの視界に入らないように努力していた。でも、その動きがどう見ても不審者である。
「真田、さっきから何しているの?立海の恥を晒しているんだから止めろよ、老け顔」
幸村さんの笑顔が神々しいようで真っ黒だった。
全員がテニスコートに戻り、集合して次の指示を聞いた。
「それじゃ、服部さんを懸けたミニゲームを始めようか」
幸村さんは嬉しそうにそう言った。