魔王、天使に恋する

□魔王、天使に告白する
1ページ/3ページ


直木の様子がおかしい。
今、彼女はボール籠を運んでいる。


「実子ちゃん」

「うわっ!?」



ガンッ、ゴロゴロゴロ……



今の音は直木が持っていたボール籠を落とし、ボールが次々に転がっていく音である。


「実子ちゃん」

「せ、精市君……」


ニコニコしている幸村に対し、少々脅えているような素振りをしている直木。


「ボール拾うの、手伝うよ」

「あ、その……ごめんなさいっ!」


直木は幸村に背を向け、部室の裏へと走っていった。


「直木さん、どうしたのでしょうか?」

「それより柳生、見んしゃい。幸村が固まっとる」

「避けられたのが、よほどショックだったのでしょうね」


柳生は幸村と今ここに姿のない直木の心配をしているが、仁王は幸村を見てケラケラ笑っている。


「……真田、俺は少し部室で休むよ。あとは任せた」

「あ、あぁ。わかった」


ふらふらした足取りで歩いていく幸村。だが、その足が一度止まる。


「そうだ。仁王……全てのボールのかたづけ、及びコートの整備など……一人で全部やっとけよ」

「プリッ」


たとえ天使に避けられても魔王は魔王であった。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ