魔王、天使に恋する
□魔王、天使に告白する
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直木の様子がおかしい。
今、彼女はボール籠を運んでいる。
「実子ちゃん」
「うわっ!?」
ガンッ、ゴロゴロゴロ……
今の音は直木が持っていたボール籠を落とし、ボールが次々に転がっていく音である。
「実子ちゃん」
「せ、精市君……」
ニコニコしている幸村に対し、少々脅えているような素振りをしている直木。
「ボール拾うの、手伝うよ」
「あ、その……ごめんなさいっ!」
直木は幸村に背を向け、部室の裏へと走っていった。
「直木さん、どうしたのでしょうか?」
「それより柳生、見んしゃい。幸村が固まっとる」
「避けられたのが、よほどショックだったのでしょうね」
柳生は幸村と今ここに姿のない直木の心配をしているが、仁王は幸村を見てケラケラ笑っている。
「……真田、俺は少し部室で休むよ。あとは任せた」
「あ、あぁ。わかった」
ふらふらした足取りで歩いていく幸村。だが、その足が一度止まる。
「そうだ。仁王……全てのボールのかたづけ、及びコートの整備など……一人で全部やっとけよ」
「プリッ」
たとえ天使に避けられても魔王は魔王であった。