魔王、天使に恋する
□天使からの贈り物
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本日は2月14日。世間ではバレンタインデー。
「おはよう、柳」
「精市か。おはよう」
やってきたのは、この行事の主役クラスの男・幸村精市。又の名を魔王……。
「ん、何か言った?」
「いや」
そんな彼は、いつもなら隣に恋人である直木を連れて登校するのだが、その彼女がいない。
「直木は休みか?」
「部の後輩たちにチョコレート渡すからって先に行った」
少し残念そうな顔をしながら幸村は笑顔でいる。
「実子は優しいから、モテない奴らにも情けでチョコを渡すんだよね。それに可愛いから害虫……例えば真田みたいなのが寄ってこないか心配だよ」
幸村の方程式は真田=害虫らしい。
それはおいといて、俺はとあることを思い出した。
「そういえば……直木は極度の“味オンチ”ではなかったか?」
「大丈夫だよ。チョコレートは溶かして固めるだけだから」
幸村と話しながら学校に行き、テニスコートの側を通ったときだった。
「大変だ!切原部長が倒れたー!」
その声を聞き、俺と幸村はテニスコートへと向かった。
赤也が倒れているだろうと思われるそこには、後輩のテニス部員たちが集まっている。そこに近づいてみた。
「あ、幸村部長と柳先輩でヤンス」
「浦山、この騒ぎは一体……」
「それが……」