呆れるほどの愛を、キミに
□サプライズ・ウエディング
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“本日の放課後、体育館裏に来られたし”
達筆な行書で墨を使って書かれた手紙は、登校したときに私の下駄箱で見つけた。
前なら、また女子の呼び出しか、と思って溜め息を吐く。が、蔵ノ介が牽制してからそれはなくなった。
では、差出人は誰だろうか。それについては、なんとなくだが予想ができる。男子テニス部の誰かだ。
(そして何のために呼び出されたのかも……)
「よぉ、黒子」
「あ、謙也」
前方から歩いてきたのは謙也。
彼は私の持っていた手紙をわざとらしく覗きこんだ。
「なんや、また呼び出されたん?」
「うん」
差出人不明の手紙だから、本来なら心配するのが普通だと思う。けど、謙也の顔は笑っている。表現するならニヤニヤ。
「まぁ、何かあったら愛しのダーリンに助けてもらうっちゅー話やな」
「はっ!」
ヘタレの企みのあるドヤ顔に、私は鼻で笑って答えた。
「こんな呼び出しに応じる馬鹿はいないわよ。よって、私は行かない」
「何やて!?」
「え?」
なんで謙也が驚くの、とでも言うかのように演じれば、ますます謙也が焦っていく。
「お、俺、急用思い出したわ!ほな!」
風のように去っていった謙也を見て笑いそうになった。
このあと謙也は、頭のいい小春ちゃんのところへ行って相談するだろう。幼馴染であるカンだ。