呆れるほどの愛を、キミに

□サプライズ・ウエディング
1ページ/6ページ


“本日の放課後、体育館裏に来られたし”


達筆な行書で墨を使って書かれた手紙は、登校したときに私の下駄箱で見つけた。

前なら、また女子の呼び出しか、と思って溜め息を吐く。が、蔵ノ介が牽制してからそれはなくなった。

では、差出人は誰だろうか。それについては、なんとなくだが予想ができる。男子テニス部の誰かだ。


(そして何のために呼び出されたのかも……)

「よぉ、黒子」

「あ、謙也」


前方から歩いてきたのは謙也。
彼は私の持っていた手紙をわざとらしく覗きこんだ。


「なんや、また呼び出されたん?」

「うん」


差出人不明の手紙だから、本来なら心配するのが普通だと思う。けど、謙也の顔は笑っている。表現するならニヤニヤ。


「まぁ、何かあったら愛しのダーリンに助けてもらうっちゅー話やな」

「はっ!」


ヘタレの企みのあるドヤ顔に、私は鼻で笑って答えた。


「こんな呼び出しに応じる馬鹿はいないわよ。よって、私は行かない」

「何やて!?」

「え?」


なんで謙也が驚くの、とでも言うかのように演じれば、ますます謙也が焦っていく。


「お、俺、急用思い出したわ!ほな!」


風のように去っていった謙也を見て笑いそうになった。

このあと謙也は、頭のいい小春ちゃんのところへ行って相談するだろう。幼馴染であるカンだ。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ