CHARM
□SWEET
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「おい、夕日里はどこに行った?」
家のどこを探しても夕日里の姿がない。とりあえず近くにいたメイドに聞いた。
「夕日里様ならお買い物に出掛けております」
「あーん?」
いつもなら俺に一言声を書けてから夕日里は出掛ける。まぁ、大抵は俺も一緒に行くのだが。
俺に内緒で出掛けるとはいい度胸だ、とこの後のメイドの言葉を聞くまではそう思っていた。
「明後日はバレンタインデーとおっしゃっていましたが……」
俺が少し不機嫌になったのを読み取ってメイドはそう言ったのだろう。
「夕日里が帰ってきたら、俺の部屋に来るよう伝えろ」
「かしこまりました」
自分の部屋に戻ってから、カレンダーを見る。そうか、今日はバレンタインデーの2日前。
夕日里が俺に内緒にしながらもチョコを作ってくれる。早く14日にならないか、と柄にもなくガキっぽい考えをした。
次の日。
「夕日里、チェスでもやらないか?」
「今から用事がありますので、あとでやります。待っていてください」
たぶんチョコを作るのであろう。夕日里はニコニコと笑みを浮かべながら返事をした。
そんな彼女を見て、少しだけ困らせてやろうと悪戯心が沸く。
「何の用事だ?」
「秘密です」
「ほぉ、俺様にも言えないことなのか、あーん?
傍に近寄り、身体を引き寄せようとしたら……
「言えません。ごめんなさい!」
夕日里はあと一歩のところで逃げるように俺の傍から走り去った。彼女の後姿を見てから床に目をやれば、紅い点が所々に落ちている。
チョコを作っている最中に鼻血が混入しないだろうか、俺はそのことが心配になった。