CHARM
□LOSS
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「飛ばせ、早くしろ!」
「これ以上は交通法規を破ることになります」
「チッ……」
「まずは落ち着いてください」
車中。俺の頭の中は夕日里の安否でいっぱいだった。なかなか動かない車、仕方のないことだが焦りとイライラがつのる。
『景吾くん……』
「夕日里……」
俺の心に呼び掛けるかのように夕日里を思い出す。何故か夕日里は悲しんでいて、俺は思わず彼女の名前を呼んだ。
何故、あいつは俺の言うことを聞かず家を出たんだ……いや、聞かないことなど最初から予測できた。夕日里はそういう女だ。だったら初めから俺の傍に……。
後悔……一番したくもないことを俺はしながら、気付けば夕日里が運ばれた病院に着いていた。外で跡部家の使用人の1人が俺の到着を待っていた。
「夕日里はどこだ!?」
「3階の救命救急室です」
エレベーターに乗り、3階のボタンを押す。早く夕日里の顔が見たい。彼女の笑顔が見たい。
バンッ
「夕日里!」
思いっきりドアを開け、中に入る。そこにはベッドで目を閉じ仰向けに寝ている夕日里の姿……。
「大きな外傷はないようです。ただ、今は……」
「夕日里……」
途中から使用人の声が頭に入らなくなった。俺は夕日里の傍に行き、彼女の顔を見る。