CHARM
□CANCEL
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「チェックメイトだ」
「んー……私の負けです。お強いんですね、景吾さん」
「ああ……」
3戦目のチェスも俺が圧勝した。
夕日里が入院してから1週間が過ぎようとしていた。脳や身体に異常はなかったものの、彼女は未だに記憶が元に戻らない。
「昨日は景吾さんに内緒で来た私のお友達の方たちが来たんですよ」
「あいつらか……」
「皆さんから景吾さんのこと、いろいろと聞きました。とにかく嫉妬深いって」
「それだけ愛してるってことだ」
そう言えば、夕日里は頬を赤くして照れ隠しするようにうつむいた。
記憶を失ってからの数日は、夕日里との間に壁を感じたが、今ではそれもほとんどないように思えた。
「そろそろ時間だな……また明日も来る」
「わざわざ来てもらう必要ないですよ。お気持ちだけでも十分……」
「俺がしたいんだ。文句ねぇよな、あーん?」
「文句はないです。でも、忙しいのではないですか?」
「忙しくはない。心配するな」
夕日里の額にキスをすれば、彼女は照れたように笑った。その笑顔を見てから、俺は病室を出た。