CHARM
□DEAREST
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「王手」
「ま、待った。その手はアカン」
「しょうがないですねぇ……じゃあ、これで王手です」
「ガハハハッ、侑士の負けだな。次、俺とオセロしようぜ」
忍足との将棋は夕日里の圧勝であった。そのあとは向日とオセロをするみたいだが、結果はわかりきっている。
部活は休み。俺は忍足、向日、宍戸を連れて、夕日里の元へと訪れていた。
階段の手すりに頭を強打した夕日里。そのため退院する日程は延びた。
だが、その強打した代わりに、取り戻したものがある。
「それにしても奇跡ってあるもんだな」
宍戸がオセロをしている2人を少し遠くから見て言った。全てのマスを埋める前に色を全て白に返され、向日が悔しがっている。
「記憶喪失も不思議なもんだったがな……」
『……景吾くん』
『!?……夕日里、お前っ!』
『どうしたんですか、景吾くん。なんか驚いた顔してるんですけど』
弱々しくだが、夕日里が俺の名前を“くん”付けで呼んだ。久しぶりに聞く呼び方に懐かしさと愛おしさが込み上げてきた。
嬉しさのあまり、彼女の上半身を支えた状態から抱きしめた。
『夕日里!』
『わっ!』
ブフーッ!
「お前ら、そろそろ時間だ」
「えーっ!もう1戦くらいやっていいだろ」
「何度やっても夕日里には勝てねぇよ。わかったら帰れ」
「わかんねーからもう1戦」
「帰れ」