そして悪魔は笑う
□始動
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「転校生の方ですか?」
「ああ。その、すまなかった」
「助けてもらったのは私です。謝る必要なんてないですよ。じゃあ、私はこれで」
律歌は相手と別れ、目的地である職員室へと目指す。その間、先ほどのぶつかった男子生徒のことを思い出していた。
(面白い大仏さんだったな。2年生かな)
失礼なことと彼のことを律歌は思い出しながらクスクス笑った。
――ドキン
(……ドキン?)
この胸の高鳴りを律歌自身が何なのか自覚するのは、もう少しあとのことである。
そして律歌は再び、神尾に対し、どのような悪戯をしようか考え始めたのであった。
(水でもかけようかしら……子どもっぽいか)
律歌は自分の教室に戻ることにした。というよりも、もともと目的なく校舎内をさまよっていただけなのだ。
だが戻る途中、遠目に嬉しそうな顔をした自分の幼馴染の姿を律歌は見かけた。彼とはテニス部の1年生がレギュラーをかけて2年生と試合した日より、挨拶程度しか会話を交わしていなかった。
(そういえば、さっきの大仏さんって……もしかして……)
新しく男子テニス部に入部した2年生という話を律歌は聞いた。しかし、聞いたといっても誰かからではなく、その噂を話している人たちの会話を聞いたが正しい。
そして、その2年生が強いことも聞いていた。
(……少しくらいの刺激にはなりそうかな)
悪魔の顔は笑顔に満ちていた。