そして悪魔は笑う

□たったそれだけ
1ページ/6ページ

雪館律歌は考えていた。


(どうすれば彼女と接触ができるかしら……)


彼女とは、律歌の幼馴染である神尾が最近気になっている橘杏。
クラスは隣同士で違うし、彼女は転校してきたばかりなので委員会なども属していない。


(部活は女テニだったっけ……)


律歌も運動神経は良い方。そのため女子テニス部に部員かマネージャーとして入部する手はあるが、それでは彼女にとってとある不都合が起きてしまう。

律歌が杏と関係を結ぶことにこだわる理由。それは彼女の本来の目的達成をより素晴らしくするためだ。これは杏がいる・いないでは大きく変わってくる。


コンコン


律歌が悩んでいる中、自室の扉をノックする音がした。彼女が返事をすれば、彼女の母親が扉を開けて入ってきた。


「律歌、洗濯した物持ってきたわよ」

「ありがとう、お母さん」

「何か悩みごと?」

「ちょっとね……あ……」


律歌の視線は母親が持ってきてくれた衣服の中にあった。


「どうしたの?」

「たった今、解決した。持ってきてくれてありがとう」

律歌は用を済ませた律歌の母が部屋から去っていくのを見てから、受け取った衣服の中の1つ、自分の体操服を手に取った。


(忘れてた。体育の授業、一緒だったんだ……)


体育の授業は他クラスと合同で行う。律歌は今まで杏に興味を持っていなかったため、そのことをすっかり忘れていた。

しかし、いくら体育の授業で接触できる可能性があっても、その機会は限りなく少ないだろう。違うクラス同士であることや、律歌が外面ではお淑やかにしているというキャラクター上、杏にいきなり話しかけることもできない。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ