そして悪魔は笑う
□たったそれだけ
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雪館律歌は考えていた。
(どうすれば彼女と接触ができるかしら……)
彼女とは、律歌の幼馴染である神尾が最近気になっている橘杏。
クラスは隣同士で違うし、彼女は転校してきたばかりなので委員会なども属していない。
(部活は女テニだったっけ……)
律歌も運動神経は良い方。そのため女子テニス部に部員かマネージャーとして入部する手はあるが、それでは彼女にとってとある不都合が起きてしまう。
律歌が杏と関係を結ぶことにこだわる理由。それは彼女の本来の目的達成をより素晴らしくするためだ。これは杏がいる・いないでは大きく変わってくる。
コンコン
律歌が悩んでいる中、自室の扉をノックする音がした。彼女が返事をすれば、彼女の母親が扉を開けて入ってきた。
「律歌、洗濯した物持ってきたわよ」
「ありがとう、お母さん」
「何か悩みごと?」
「ちょっとね……あ……」
律歌の視線は母親が持ってきてくれた衣服の中にあった。
「どうしたの?」
「たった今、解決した。持ってきてくれてありがとう」
律歌は用を済ませた律歌の母が部屋から去っていくのを見てから、受け取った衣服の中の1つ、自分の体操服を手に取った。
(忘れてた。体育の授業、一緒だったんだ……)
体育の授業は他クラスと合同で行う。律歌は今まで杏に興味を持っていなかったため、そのことをすっかり忘れていた。
しかし、いくら体育の授業で接触できる可能性があっても、その機会は限りなく少ないだろう。違うクラス同士であることや、律歌が外面ではお淑やかにしているというキャラクター上、杏にいきなり話しかけることもできない。