そして悪魔は笑う
□たったそれだけ
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時が経てば仲良くなるチャンスは来るだろうが、律歌の本来の性格上、それは自分のプライドが許せない。
「こうなったら、賭けるしかないか……」
口からはそう言葉が出たが、運任せという自分の知恵を活かせないことが律歌はあまり好きではない。
そのためか、何か策はないかと再び頭を回転させた。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
神尾は登校時、偶然にもテニス部部長の橘桔平の妹・橘杏と出会い、一緒に登校していた。
「マネージャー?」
「そう。杏ちゃん、誰かいい人知らない?」
杏の考える姿を見て、可愛いと思ってしまう神尾。見惚れてしまっている。
「すぐに思いつかないけど、良さそうな人がいたら紹介するわね」
笑顔で言う杏を見て、神尾は顔を赤くしながら返事をした。
しばらく会話を堪能しながら登校し、朝練のために2人は別れる。
「じゃ、またね」
去っていく杏の後ろ姿を見て、思わず顔がニヤける神尾。だが、幼馴染のとある言葉を思い出してしまった。
『橘杏ちゃん……可愛い子なの?』
(大丈夫だ。律歌と杏ちゃんはクラスも違うし、他に接点もない。あの悪魔が自分から声をかけにいくこともないだろうしな)
しかし、神尾の考えは思わぬところから崩れ去ることになる。
その日の授業後、いつものように部活が始まる。新生男子テニス部はハードな練習をこなしていた。
だが、その練習が一時中断されることが起きた。
「あ……」
伊武が何かに気づいて練習をピタリと止める。
「杏ちゃんと雪館さんだ」
「なんだ、杏ちゃんと律歌かよ…………律歌だと!?」
伊武の言ったことが嘘であってほしい。
そう思っても神尾が見た光景は男子テニス部の方に向かって歩いてくる2人の女生徒は、神尾の気になる相手である杏と悪魔のような存在である律歌だ。