そして悪魔は笑う

□マネージャーの思惑
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「ん、これでいいかな?」

「あ、ああ。疑って悪い」


そして、再び神尾の手にドリンクが渡った。


「仲睦ましいところ悪いんだが……」


周りから見たら、2人がとても深い仲に見えるのだろう。遠慮するような形で声をかけてきたのは橘だった。2人とも彼の方へ向く。


「雪館、休憩の今、マネージャーの仕事内容とかを説明したいんだが、いいか?」

「はい」

「悪いな、神尾」


そう言って、橘は律歌を連れて部室へと入っていった。

1人残された神尾はドリンクを飲みながら、他の部員が集まっているところへと歩いた。


「いいなぁ、神尾。雪館さんと間接キス」


桜井が茶化すように言うが、神尾は特に慌てる素振りもない。


「幼馴染なんだから、今更照れることでもねぇよ」

「お前なぁ、高根の花と呼ばれる雪館さんだぞ!そんな子がこのテニス部のマネージャーをやっているのも不思議なくらいなのに、さらにお前と幼馴染だなんて……」

「んだよ、何が言いたい?」


桜井が何も言わないでいると、フォローするかのように伊武が言う。


「……雪館さんの唯一の汚点だよね」

「よし。深司、そこで歯を喰いしばれ」

「やだなぁ。俺は本当のことを言っただけじゃん。それを自分が気に入らないからって、暴力で解決しようとしてさぁ……人としてどうかと思う」

「だったら、んな喧嘩売るようなこと言うんじゃねぇよ」

「そんなことより……」


伊武は興奮している神尾を放って、部室の方を見た。


「なんか、橘さんの様子、おかしくなかった?」

「は?別に普通だと思うけど」

「俺も特に変だと思わなかったけど」


神尾の言葉に桜井も同意する。その2人の様子を見て、伊武は軽く溜息を吐く。


「ま、2人とも人の微妙な変化とかわかってなさそうだから、聞くだけ無駄か」

「お前の空気の読めなさよりはマシだっつーの!」

「まぁまぁ落ち着けって、神尾」




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




部活が終わり、家に帰った神尾は自分の部屋で制服から部屋着に着替えていた。


ガチャ


「アキラ」

「律歌……ノックぐらいしろよ。お前はプライバシーって言葉を知らないのか?」

「アキラにプライバシーって存在するんだ。初めて知った」


まったく悪びれる様子もない律歌に神尾は深い溜息を吐きそうになる。
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