そして悪魔は笑う

□わらしべ長者
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「あーっ!ったく、繋がらねぇ」


それは5回目のコール。現在、神尾は奮起していた。実は近日、神尾が最近注目しているバンドグループのライブがあり、彼にとってどうしても行きたいイベントであった。

ライブの開催日が偶然にも学校も部活も約束も神尾にはなかった。そのため、チケット前売りである今日、発売開始時間の10時から携帯電話片手に彼は闘っていた。


prrrr……


『はい、こちら○○チケットサービスです』


神尾は電話がつながったことを心の中でガッツポーズする。


「あの、チケット番号M‐327を2枚欲しいんですけど」

『すみません。そちらのチケットは先ほど売り切れとなりました』


その場で崩れ落ちた神尾であった。





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆





翌日、不動峰中学校、昼休み。神尾、伊武、石田の3人で昼食をとっていた。


「あ゛ー……」

「なぁ、神尾に何かあったのか?」


神尾が項垂れながら食事をとっていたため、石田が理由を伊武に聞いた。

「行きたかったライブのチケットが手に入らなかったんだって。まったく、空気が重くなるから溜息とか変な声とかやめてくれないかな。無理か。アキラは空気読めないもんね。ほんと嫌になるよなぁ」

「ははは…………」

「あ゛ー……」


変な声を出しながら、神尾は飲料水のおまけであるストラップを中身がわからない袋から取り出した。それはリーゼントでサングラスをした金色のタヌキであった。


「あ!?」


それを見た石田の目の色が変わった。


「神尾、それ……“ワイルドタヌキ・スーパーゴールド”じゃん!」

「ワイルド……何だそれ?」

「知らないのかよ、“ワイルドタヌキ”!今、飲料水のおまけなのに願い事が叶うって風のうわさがたって大人気なんだぜ!俺もワイルドタヌキ・レッド、ワイルドタヌキ・ブルー、ワイルドタヌキ・イエロー、ワイルドタヌキ・ブラック、ワイルドタヌキ・ホワイトを持ってるけど、まだレアのワイルドタヌキ・スーパーゴールドは持ってないんだよ」

「へぇ。珍しいのか」

「ああ。だけど、ただ持っているだけじゃ願い事は叶わないんだ。このワイルドタヌキを誰かにあげたときに効果が表れるってうわさだ」

「うわさねぇ……」


神尾は少し考えてから口を開いた。


「やろうか?ワイルドタヌキ・スーパーゴールド」

「いいのか!?」

「あげると願い事が叶うんだろ?だったらやるよ」

「ありがとう」


もちろん、神尾はただ単にあげたわけではない。


(もし、うわさが本当なら絶対叶えてくれよ。ひょんなことからロックライブチケット2枚!)


心の中でワイルドタヌキに願うのであった。


「そうだ。代わりにこれあげるよ」

石田がカバンから取り出したのはジュースである。


「ワイルドタヌキのため買ってるからたくさんジュースが溜まっちゃって。捨てるのももったいないからあげる。伊武にもあげるよ」

「おっ、サンキュー」

「ありがと」

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