そして悪魔は笑う

□わらしべ長者
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◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆





神尾は廊下を歩いていた。手には先ほど石田から貰ったジュースがある。彼には目的があった。

わらしべ長者をご存じだろうか。わらを持っていた青年が物々交換をしていくうちに最後には大金持ちになった話である。
神尾はそれを狙っていた。


(このジュースを交換していけば、いずれはロックのチケットに辿りつくはずだ!)


世の中そんな簡単に上手くいくわけはないが、ワイルドタヌキに願い事をしたということが強みになって、神尾は手に入ると信じていた。


「あっ、神尾だ」

「ん、桜井か」


廊下にある手洗い場で、神尾は桜井と出くわした。


「ちょうどいいところで飲み物持ってるじゃねぇか。頼むからそれ譲ってくれ!」

「何でだ?」

「俺、水筒忘れたんだよ」


さらに桜井はこれまでの経緯を説明する。朝練、体育の授業、濃い味の弁当、バームクーヘンと喉が渇くものばかりであった。


「それで今、水道水を飲もうかと悩んでいたところだ。頼む!俺に飲み物を!」

「わかった、わかった。これやるよ」

「サンキュー、神尾!」

「その代わり、何かくれよ。何でもいいから」

「そうだな……」


桜井は受け取ったジュースを飲みながら考えはじめた。


「コロッケパンでいいか?本当は午後の部活後に食べようと思ってたんだけどさ」

「ああ。それでいいぜ」





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再び、廊下を歩く神尾。先ほどと違うのは手にしているのがコロッケパンであることだ。


「ハァ……」

「何やってんだ、内村」

「あぁ、神尾か」


窓の外を見ながら溜息を吐いていた内村と神尾は出くわした。


「神尾、何も言わずにこのチケットを受け取ってくれ」

(チケット!)


手渡されたのはチケットが入っている封筒。神尾は受け取ると早速中身を確認した。


(なんだ、映画か)

「やるよ、そのチケット」

「なんかあったのか、このチケットに?」


内村は一瞬言い渋るが、周りを一度見渡してから話し始めた。


「実は……雪館さんを誘ったんだ」

「断られたのか」

「あぁ、そうだ。雪館さんが最近ハマってるらしい歴史ものの映画、せっかく買ったのにな」

「たった一度断られただけだろ」

「そうだけどよ……これ以上は言えねぇ。とにかくこのチケットやるよ。見たくねぇ」

「じゃあ、もらう……代わりにこのコロッケパンやるから元気出せよ。」

「ありがとな……」

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