そして悪魔は笑う

□わからない
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「雪館さん、これ……」

「ロックのライブチケット?」

「今度の土曜日なんだ」


律歌はとある男子生徒に呼び出され、見せられた2枚のチケットを手に取った。もちろん、これはデートの誘いである。


(これ……アキラが行きたがってたチケットね。しかも最前列)

「や、やっぱり、ロックに興味ない、かな?」

「音楽はジャンル問わずに大好きよ」


むしろ律歌は、その男子生徒に興味がない。そんなことを知らない彼は、勇気を出して彼女をデートに誘おうとした。


「じゃあ……」

「ありがとう。誰か誘って行かせてもらうね」

「うん……って、えっ、いや」

「あ、私、部室に用があるから行かないと……チケット2枚ありがとう。さようなら」

「さ、さようなら……」


そのとき、1人の少年の恋が儚く散った……。


(ロックのチケットを貰ったのはいいけど……アキラと一緒に行こうか、アキラに売るか)


律歌はチケットを眺めながら、部室ではなく教室へと戻っていた。


(よし。売ろう、チケット)

「雪館さん!」


楽しむことより金を取った彼女に声をかけたのは、同じテニス部の内村であった。


「どうしたの、内村君」

「あ、あのさ、今度の土曜日、空いてる?映画行かない?チケット2枚あるんだ」


内村の誘いに律歌は考えた。どうやったら映画のチケットを上手く言いたぶらかして入手できるかを。

しかし、部活仲間である彼をだますのはさすがに気が引けたため、1秒で考えるのをやめた。


「ごめんなさい、その日は他の人と予定があって」

「ほ、他の人?」

「実はね、デートなの。他の人には絶対言わないでね」

「で、でーと……」


律歌は嬉しそうに言っているが、もちろんデートの予定はない。あえて言うことで、これ以上誘ってもらうこともないだろうと踏んでだ。なぜなら、彼女は内村にそれほど興味がない。


「じゃあ、私、教室戻るから。また部活でね」

「う、うん……」


落ち込む内村を気にもしないで、律歌は再び教室へと向うのであった。


(そうだ!どうせなら有言実行させちゃいましょ。アキラにあげないで橘さんを誘ってみよう)


そう考えた律歌は、鼻歌をしながら教室へと戻っていった。
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