そして悪魔は笑う
□決断のとき
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「今日はありがとう」
「こちらこそ、楽しかったです」
夕方、映画を観たりウィンドウショッピングをしたりと一通り楽しんだ帰り道、橘は律歌を家まで送っていた。
「雪館、ちょっと大切な話があるんだが、いいか?」
「はい、なんですか?」
歩いていた橘がふと足を止める。それに合わすように律歌も歩みを止めた。
「俺はお前の事が好きだ。付き合ってくれないか、律歌」
――――そんなの、答えはもう決まってるじゃない。私だって橘先輩のことが好きなんだから。
でも、どうして?
どうして、こんなに胸がモヤモヤするの……?
「その、私は……私は…………」
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ガチャ
「はぁ……」
「何しに来た。早く帰れ」
帰ってきた律歌。同じく帰ってきていた神尾の部屋にまた来ていた。
律歌はそのままベッドの上へ寝ころんだ。
「はぁ……」
「早く帰れ」
「嫌だ」
「帰れ」
「嫌だ」
「ったく……話だけなら聞いてやるよ」
一向に帰ってくれない律歌に諦めを感じた神尾は、溜息を吐いて沈んでいる彼女の話を聞こうとした。
「……ライブはどうだったの?」
「そんなの、めちゃめちゃ盛り上がったに決まってんだろ!スッゲェ楽しかったぜ!」
「そういえば、誰と行ったの?杏ちゃん?」
「杏ちゃんは誘ったけど予定があった……。深司を誘って行ったよ」
「そう」
「って、俺の話はいいんだよ」
いつの間にかすり替わっていた話を元に戻した。
「映画がつまらなかったのか?」
「いや、おもしろかったよ。映画館でさ、2人とも何にも知らずにカップルシートにしちゃって、後から席を見て2人で顔真っ赤にしちゃった」
「その後はなんかしたのか?」
「ウィンドウショッピングした。今度の誕生日にネックレス買ってもらう約束した」
「随分充実したデートを満喫したじゃねぇか」
「当然でしょ」
では、何が律歌が溜息を吐かせる要因なのか神尾にはサッパリだった。